聖闘士星矢 | ナノ
静かな夜。
勤務時間はとっくに過ぎ、就寝している人も多いであろうこの時間帯だが、執務室にはぼんやりと光が灯っていた。
必要最低限の明かりだけを点け、机に向かっている影。
「お疲れ様、サガ。」
「……ナマエ? どうした、こんな夜遅くに。」
「夜遅いから来たんでしょう? はい、差し入れ。」
貴方、何も食べてないと思って。
そう言って執務室に入ってくるなり、彼の机の隅に軽食を置くナマエ。
「コーヒーでいい?」
「あぁ、すまない。」
ことりと置かれた湯立つコーヒーと軽食を口にしながら、サガは目の前の書類に目を通す。
内容は大したことはないのが多い。ただ、量が多いのだ。
「…………。」
「…………。」
大方内容を見て良しとしたのか、ペンを持ちサインをするサガ。
そんなサガの背中に、ナマエはゆっくりと覆いかぶさるように抱き着いた。
ぴくり、と手元が揺れる。
「!」
「あ、もしかしてずれちゃった?」
「いや、大丈夫だ。……少し、驚いてな。」
「あら、私だって甘えたい時ぐらいあるわよ。」
ぎゅ、と回された腕に力が入る。
それを感じ取り、サガはそペンを置いて、そんなナマエの小さな手に自らのを合わせた。
「サインはいいの?」
「問題ない。」
「ふーん。」
ただそれだけ返せば、ナマエはサガの首元に顔を生埋める。
自分の分と相手の分との髪で多少のくすぐったさは感じるも、サガはそれを受け入れた。
そして、優しげな音色でナマエに声をかける。
「どうした? いつもと少し違うな。」
「寂しいの。」
「え……。」
ぽつりと返された言葉に、サガは目を丸める。
自分が彼女に寂しい思いをさせているのは分かっていた。
そして、その状態でも何も言うことなく自分を受け入れてくれる彼女に感謝をしていた。
そんな彼女からの、初めての「寂しい」。
「……あんまり寂しくしちゃうと、浮気しちゃうぞ?」
「! それは、……あまりいただけない発言だな。」
「だったら離さないで。」
「あぁ、無論だとも。離しやしないさ、絶対に。」
ぎゅ、とナマエの手を握り、サガはもう一方の手でナマエの頭を撫でた。
「さがー。」
「ん?」
「今日は此処で私も寝る。」
「……双児宮に、帰ろう。」
「サガ明日も朝早いって言ってた。」
今朝確かに言った。
サガは苦笑いを浮かべる。
「それは問題ない。大方今日の分も片付いているし、大丈夫だ。」
「……本当に?」
「本当に。」
「本当の本当に?」
「あぁ、もちろん。」
顔を上げて何度も確かめるナマエ。
それに、きちんと返すサガ。
「……じゃあ、帰ろう?」
「せっかくだから風呂でも共に入ろう。」
「それは恥ずかしいから嫌。」
.
この前テレビでやってました。
「寂しい」は女の浮気への門を開ける言葉みたいです(笑)