聖闘士星矢 | ナノ

Origin.



がちゃんッ!
という乱暴な音と共に、我が家の扉が開閉された。


「んー……。」


自室のベッドで寝ていたナマエは眉を寄せる。
誰が来たかなんて、姿を見なくともわかる。


「おい! ナマエ、いるんだろ!」
「ん〜……。」


どすどすと音を立てながらこちらへと近づいてくる足音。
ナマエは布団を頭まで被り、背中を向けるようにして壁側に横になる。
それと同時に扉が開かれた。


「おい、俺を無視するとはいい度胸だな……!」
「んー……。」
「何がんー……、だ! 早く起きろ!」
「んーっ……。」
「ったく。」


布団に丸まるナマエを見て、部屋に入ってきた人物――カノンは溜め息を1つ吐けば、彼女の布団の端を掴めば思い切りそれを引っ張った。


「んぎゃっ! さむっ、何するの、酷っ、苛めですか、苛めなんですかカノンさん!」
「やかましい! だいたい何故飯を作らずベッドなんぞに入っている!」
「寒いんです! 前代未聞の寒さなんですーっ! お前には分かるまいカノン!」
「分かるかそんなもの! ええい、さっさと起きろ!」
「ぎゃっ、摘むな! 摘むんじゃない! 私は猫じゃなーいっ!!」


カノンによって簡単に摘まれたナマエは、そのまま家のキッチンへと連れて行かれる。
そして、キッチンまでつけば、前触れもなくその手が離された。


「いでっ。ちょ、もう少し優しくしなさいよね!」
「お前が悪いんだろうが、お前が。約束を忘れたとは言わせんぞ。」
「うぐぅ……!」


実はこの2人。つい先日、ひょんなことから賭けをした。
カノンが勝てばナマエに、ナマエが勝てばカノンに料理を作ってもらうというものである。

その賭けに勝ったカノンは、双児宮に帰宅すればてっきり夕食があるものと思っていた。
だが、双児宮の中は空っぽ。人っ子1人いないという現実。
ぴきッと自身の青筋が浮かんだのを感じながら、彼はわざわざナマエの自宅まで足を運んだのである。

案の定、当の本人は賭けの出来事などすっかり忘れ、寒さに震えながら布団にくるまっていたというわけだ。


「まさか、本当に忘れたわけではあるまいな……?」
「あー、……ほら、寒くて、ね?」
「どんな言い訳だ! ……まぁいい。約束を破ったんだ。それ相応の罰は受けてもらうぞ。」
「えぇ……? ご飯じゃなくて?」
「飯も含め、だ。」
「えええ。」
「えええ、じゃない。」


がっくり肩を落とすナマエに、カノンは不敵な笑みを見せる。


「今夜はとことん付き合え。」
「はぁ? 私明日仕事なの。朝から相手方といろいろあるの。だめ、絶対ダメ。」
「ほぅ、お前はその相手方との約束は守るが、俺との約束は守れないというわけか。」
「うぐっ……。」
「ナマエ。」
「……わかった、わかりましたよ!」


半ばやけくそといった感じの返事ではあったが、カノンは確かに聞いたと笑みをさらに深めた。
そしてその後、ナマエは夕食を渋々ながらも作り始め、カノンは酒を飲み始めた。

それから暫くして、2人はテーブルを挟んで食事をする。
食事がすめば、ナマエはすぐさま食器を片づけ始めた。


「はい、これ。」
「どうしたんだこれは。」
「この前相手方と打ち合わせした時にもらったの。
なんでもまだ未販売のものなんだってさ。せっかくだから飲みましょう。」


ナマエはワインを取り出すと、カノンの隣に腰掛けてそれをあけた。
そして、グラスに注ぐ。


「ほい。まぁ約束忘れちゃったけど、これで許してー。」
「誰が許すか。」
「んもう、現金な大人になりなよ。」
「なるなよ。」
「いいじゃん、減るもんじゃないし。」
「何かが減る。」


お互い言い合いながらも、微笑みあいグラスを合わせた。


「ん……ちょっと甘めだけど美味しいね。」
「これぐらいならいいもんだな。」


そうして2人はワインを注ぎ合い、それを空にするまでわいわい話し合いながら飲んだ。
手は進み、意外と早くに瓶が空になる。
なかなかイケるなと思いながら、別のを出そうととナマエが立ち上がろうとする。
だが、カノンがそんなナマエの腕を即座掴み、自らの方へと引き寄せた。
咄嗟のことに目を丸め、カノンの腕の中に埋まるナマエ。


「え、なに。お酒、取りに行けないんだけど。」
「もういい。」
「え? いいの? もう満足?」
「あぁ。」
「ふぅん、なら私寝よっかな。」
「そうだな。」
「……なんか物分りいいカノンって怪しい。
まぁいいさ。ならシャワーでも浴びて早くね――っきゃ!?」


訝しげな表情で、口角をあげ笑みを携えているカノンを見ながらも、明日は早いため寝かせてくれるならありがたいとカノンの腕から抜けようとするナマエ。
カノンはそんなナマエをソファの上に組み敷いた。そして笑みを絶やさないまま。


「シャワーの前に1回寝るか。」
「え、え、……え。」


目をぱちくりとさせるナマエ。


「付き合えって、そういう意味、だったんでしょうか……?」
「当然だ。」
「えと、……無理なんだけどーなんて。」
「聞かないな。」
「……明日早いんですけどーなんて。」
「俺の知ったこっちゃない。」
「…………えと、」
「そういえばお前、寒いんだったな。」
「え。いえ、あの、夕飯食べてもう体温かいです。大丈夫。全然大丈夫!」
「そうか、心の準備はできたか。」
「違うわっ!」
「まぁいい。大人しく、今夜は俺に付き合え。俺の気のすむまで、な。」


にやり、
そんな表現が正しいだろう。カノンは口角をあげ、ナマエに口付けた。



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要は約束を守れと、そういうことです。
タイトルが浮かばなかったとか、そんなんじゃないし…………う

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