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#01 イケメンさんいらっしゃい


 一度も見上げたことのない空。常に天にはわたしたちの生活を二分させるプレートが設置されている。上はさぞ豊かだろうけど、わたしはこのスラムでの生活が大好き! だって、人との関わりがとっても温かいから。


「ナマエ戻りました!」
「お、帰って来たか!」
「おっかえり〜ナマエ!」
「お帰りなさいッス!」


 セブンスヘブン。七番街で一番お気に入りのバーであり、わたしたちアバランチの作戦会議室のある場所。


「あいつら元気にしてたか?」
「はい! ちょっと怪我した子がいたので軽く治療はしておきました」
「おーさんきゅ。ほら、ご褒美にチョコやるよ」
「こっ子ども扱いしないでください!!」


 ビッグスさんはお兄ちゃんみたい。いつもわたしを可愛がってくれるけど、ちょっと下に見られ過ぎているのが玉に瑕かな。


「あ〜今日もナマエ可愛いっ! ちゅーしてあげる!」
「わたしも、ただいまのちゅーします!」
「あ〜ん! キュートすぎ!」


 ジェシーさんもわたしを可愛がってくれる人。綺麗で、でもお茶目なところがあって大好きなお姉さんって感じ。


「相変わらずッスねぇ。あ、ナマエにこれあげるッス」
「ウェッジさん……ビッグスさんとやってること一緒です!」
「あれ? そうスか? まあ、細かいことは気にしちゃダメッスから!」


 ウェッジさんは唯一わたしと似て弱気なところがあるのに、やっぱりお兄ちゃんポジションに立とうとしてくる。この三人がわたしはとっても大好き。家族のいないわたしにとっては、三人と過ごす時間が、家族の時間!


「ナマエか、無事帰って来たな!」
「あっ、おかえりなさい!」
「ただいまです、バレットさん。マリンちゃんも、わたし帰ってきましたよ〜!」


 可愛いマリンちゃんの父親バレットさんは、頼もしいアバランチのリーダー。ちょっと……というより大分恰幅がいいせいで初めて会った時は怖くて泣きそうになったけど、仲間思いで情が厚い人。時間が経つにつれとっても信頼できる人になった。


「今夜の作戦だが、お前も来い」
「えっ!? え、え!? わ、わたしですか!?」


 そんなわたしもアバランチのメンバーだったりする。身体能力はビッグスさんたちみたく高くないし、戦闘だってあんまり役に立てないのに……。


「魔晄炉に潜入するんだ。恐らく神羅兵器を相手にすることも多いだろ。おまえの出番だぜ」
「うぅうぅ……がんばり、ます」
「だいじょーぶよナマエ! 私たちだって一緒なんだから」
「ジェシーさぁん!」
「もう可愛くてダメ〜〜一旦お持ち帰りしてもいいっ!?」


 ぐいっと抱きしめてくれるのは嬉しいけど、よ、鎧がちょっと痛い……。


「ほら、おまえたちはとっとと解散しろ! しっかり支度して来いよ!!」
「はいはい。じゃ、ナマエまた後でね〜!」
「そのチョコ食べて糖分とっとけよ」
「今回はオレも参加するッスからね!」


 ひらひらと手を振ってジェシーさんたちと別れる。マリンちゃんはもう少しで寝る時間だからとバレットさんが一度部屋へ連れて行った。暫しの一人の空間を楽しんでいると、バレットさん戻ってくるのと同時にリフトが作動した。出てきたのはティファさん。ともう一人、知らない男の人……なんだけど……。


「うぇえ、いけめん……」


 細身なのにしなやかな筋肉はしっかりとついていて、まさに細マッチョ。肌も白めで輝いていて、なによりも顔が良い。良すぎる。金髪の髪もきれい!


「誰だ」


 おまけに声が良い。良すぎる。低すぎず、かといって高すぎない耳に心地の良い声。脳震盪でも起こしたのかと錯覚するレベルで、くらりと眩暈がした。


「どっ、どどどちら様ですか!?」
「ティファの昔馴染みなんだとよ。いけすかねぇ野郎だ」
「もうバレット、そんなこと言わないで?」


 小首を傾げるティファさんのお隣が大変お似合いと言うか……まさか恋人!?


「ナマエ、こっちはクラウド。今回の作戦に参加してくれるのよ」
「えぇえ!? こ、こんなイケメンさん戦えるんですか!?」
「なめるな」


 し、痺れる……。


「まさか、この小さいのも作戦に加えるのか」
「ち、ちいさい……そりゃ身長ないですけど!」
「こう見えてもナマエって魔法がすっごく強いんだよ? 特にいかずちはね」
「なるほどな。メカ対策というわけか」
「そ。まあ……他はあんまり、なんだけど」

 
 自分でも分かってたけど、ティファさんに言われるとものすごくショック……。


「あっ! あんまりって言っても私より魔法だけは全然強いんだし! 今回頼りにしてるってジェシーも言ってたし期待出来るかも!」
「ふぉ、フォローに、なってないです……」
「…ごめん……」


 がっくし肩を落とすと、クラウドさんが嘆息した。その姿すら芸術品みたい。


「ナマエ、十分に気を付けてね? 本当は行かせたくないんけど……」
「大丈夫ですよ、ティファさん! わたし、今夜のためにたらふくご飯食べてきましたから!」
「クラウドのこと、よろしくね。バレットとほら、相性良く無いみたいだから……」


 バレットさんがクラウドさんを睨みつけている。え、わたしこの人たちと一緒に行動するの? ちょっと胃が痛むんですけど……。




 アバランチの今回の作戦は、練りに練ってきた魔晄炉爆破。星のエネルギーを吸い上げて消費する装置を一つ壊すこと。列車に乗り込んだわたしたちは、目的駅の警備兵を密やかに倒した。といってもわたしはバレットさんの隣で立ってるだけだったけど。


「行くぞ、新入り!」


 電車から飛び降りるクラウドさんがかっこいくて、ちょっと心臓が……。すぐに警備兵が襲ってくるけれど、これを躊躇なく撃退した上に「笑わせるな」なんてイケメンにしか許されない台詞……!


「クラウドさんっ、かっこいいです!」
「……あんたは先行かなくていいのか」
「ちょっとナマエぼーっとしてない!」
「あ! ま、待ってくださいジェシーさん!!」


 改札口を軽やかに飛び越えていこうとしたら、脚が上がりきらずに突っかかった。後ろからクラウドさんが呆れた声出したのが聞こえてきて、思いっきり恥ずかしい! 何度敵に襲われてもクラウドさんが一刀両断してしまうものなので、完全に虜になりました……。


「持ち場に急げ!」
「クラウドとナマエはこっち!」
「走れ走れ!」
「クラウドさん急ぎましょーーあ、もう追い抜かれちゃった……」


 走るのも早いんですね……。
 壱番魔晄炉の内部まで潜入は順調、かと思いきや早速クラウドさんと閉じ込められてしまいまして!?


「観念しろ!」
「こっちの台詞だ」
「相手は二人、うち一人は女だ」
「女から先に片付けろ。集中砲火だ!」


 え、え? 完全にわたしから狙われてる!?


「邪魔だ」
「うぇええすみませんん!!!」


 頭を抑えつけられて抵抗することなくしゃがみ込むと、見事にわたしの頭上を弾が通過していく。うっそでしょ……。ひぇぇ、なんて情けない声が出たら睨まれた。分かってたけどひどい!!


「わ、わたしだってやる時はやるんですから! ……ってあれ」
「お待たせナマエ〜大丈夫だったでしょ?」
「は、はあ……全部クラウドさんがやっつけてくれました」
「う〜ん、さっすがぁ!」


 まずい。クラウドさんの中でわたしの力量が底辺になってる。そ、そりゃ他に比べたら弱っちいですけど!


「こっからは慎重に行く。少しでも可笑しな動きをしやがったら、容赦しねえ」
「……がっかりさせるなよ」
「ひぇ」


 この二人バチバチすぎる!
 少し先へ進むと、一体の機械兵器がわたしたちの前に立ち塞がった。ちょっとお顔に縦線が入って可愛い……かも?


「あれは通称スイーパー。ヘマしたらお掃除されちゃうかも」
「その前にスクラップにしてやるさ」
「へっ、ただの鉄くずじゃねぇか!」
「攻撃力防御力共にけた違いだ。なめてかかると死ぬぞ」


 え、え? あれと戦うの!? 迷うことなく駆け出していったクラウドさんとバレットさんの背中をぼーっと見つめていたら、ジェシーさんに背中を叩かれる。


「ほらナマエの出番だよっ! どかーんと一発やっちゃえ!」
「っは、はい……!」


 手にした杖を握り締める。私の詠唱に気付いたのか、クラウドさんが一瞥してきた。


「あんたは下がってろ。邪魔なだけだ」
「うぇえ……?」
「はんっ、こいつは気こそ弱えが魔法火力はすさまじいぜ!」
「……そうは見えないがな」


 う、やっぱり馬鹿にされてる……!
 これは一発どでかいの決めて、わたしが意外と出来る女だってこと証明しないと。


「いきます! 離れてくださいね、サンダー!!」


 杖を振り翳すと、先端から勢いよく稲妻が迸る。一直線に伸びたいかずちがスイーパーの起動部を破壊したのか、しゅぅんと音を立てて機能停止させることに成功! こ、これはやったのでは!?


「……これがサンダーの威力だと?」
「え、よ、よわ、弱いですか……?」
「……」


 ふいっと顔を背けられて、まさかわたしの魔法が役に立たなかったのかとしゅんとしてしまう。皆強いって手放しに褒めてくれるから唯一自信あったのに。やっぱりソルジャーさんからしてみれば、子ども遊び程度なのかな。


「落ち込まない! ナマエの魔法にクラウドもビックリしたんだって」
「そ、そうでしょうか……? 怖い顔、されてました」
「元々でしょ。ほら、先に行くよ!」


 クラウドさんは、バレットさんにいくつと問われて、ファーストだと答える。バレットさんがこれを揶揄うものだから、間に立つのが大変だった。ジェシーさん手伝ってくれれば良いのに面白そうに笑ってるだけなんだから。


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