D.C | ナノ

Origin.


天には逝かせない


どうして、いつもこうなんだ……。
どうして。どうして。


「しっかりしろ!」


どうして!


「目を開けるんだ!」


どうして答えてくれない!!


「ナマエっ、起きろ! ナマエ!!」
「――……、」


どうして、いつもいつも奪っていく!
俺の前から、俺の隣から、俺のすべてを奪っていくんだ――!!


「…れ、さ……。」
「っ、ナマエ……?」
「…ッは……は、」
「ナマエ、起きろ、怒らないから早く目を開けるんだ……。」
「は、は……酷い、顔。」


血の気の引いた顔なんて見たくない。
傷ついた肢体に流れる血液なんて見たくもない。
俺が見たいのは、ただ昨日と同じ、俺を見つめるその瞳だ。
汚れのない、プライドに満ちたその瞳。俺を見つめる、優しくて、愛おし気なその瞳なのに。


「れ、いさ……ごめんな、さい。」
「謝るのは治してからだ。」
「もうすぐこちらに到着します!」
「すぐ運んでやるからな。いいか、それまで歯を食いしばれ。」
「め、れ……?」
「ああ、命令だ。死ぬな、絶対にだ! お前は、」


お前だけは――。


「…ね、……」
「喋るな。生きることだけを考えろ。お前は、」
「ごめ、……ん、ごめん…なさ……。」
「お前はこんなとこで死ぬべきじゃないんだ!」
「…っは、…は……、」


ああ。止めてくれ。
もっと俺の手を強く握るんだ。
もっと、力強く呼吸をするんだ。
もっともっと、目を見開いて、俺を見るんだ。


「わ、たし……や、やくに……っぁ、た、てた?」
「たつんだろ! これからもっと、俺の傍で!」
「…ん、……、」
「ナマエ、俺を見ろ! 目を閉じるな!」


きっと今、お前の視界は霞んでいるんだろう。
お前の指先には力が入らないんだろう。口ですら、動かせないんだろう。
そんなの、そんなの分かってる。でもどうしても、俺は、お前に言い続けなければならない。


「ナマエ! 俺の名前を呼べ、俺の顔を見ろ、俺の手をもっと、握るんだ!」
「っは、…は、……れい、さん……。」
「頼むから、ナマエ……俺を独りにしないでくれ……。」


脳裏に浮かぶ。
今まで何人、目の前で死んで来た。
何人、俺の周りから人が消えていった。


「もう、……いなくなるな……。」
「…れ、さん……だい、じょーぶ。」


ああだめだ、
血が止まらない。
くそっ、ふざけるな。


「しな、…いか……。」
「当然だろ……誰が先に死ねと命令したんだ……。」
「…から、…なか。ないで……。」
「泣くか……いちいち泣いていたら、キリがない……。」
「っは、は……ぅっ、ぁ……」
「ナマエッ!?」
「降谷さん、お待たせしました! すぐに搬送を!」
「ここは頼んだぞ。」


なんでこんな冷たくなるんだ。
昨日はあんなにも温かかったというのに……!!


「死んだら許さないからなッ!」


まだ連れて行かないでくれ。
こいつは、まだあなたたちの元へ行くには、早すぎる――。


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