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Origin.


主導権は俺のもの


半年に一度実施している、大規模な会議がある。
とはいえ、3度程連続で出席できていないのが現状だ。
基本的には潜入捜査上での生活が優先されるため、致し方ないだろう。
しかし今回は何とか席に座ることができた。


「では、以上で会議を終える。解散。」


次々と椅子から立ち上がる音が聞こえる。
この場にいったい何人の人間が収納されているのか。
久々に大勢の前に立ったからか、少し気疲れした。上へのご挨拶回りもあるしな。
さて――。


「お前はこっちだ。」
「うぐぇっ!」


そそくさと逃げ腰で立ち去るその襟元を掴めば、女とは思えない声が出た。
振り向くその表情はやけにこちらの加虐心を擽らせるのは、本人は知らないのだろう。
苦しげな声を聴かないふりして、隣の準備室へと引っ張れば後方からこいつを憐れむ視線を感じた。


「頑張れよ……。」
「風見。」
「はっ、はい!」
「後処理は任せたぞ。」
「はいっ!!」


逃げようとする、まだまだ力の足らないその体を引っ張って、部屋の中に押し込んだ。
崩れるバランスからの立て直しは、以前よりも上手くなったもんだ。
前なんて、少し押し出しただけで体勢を崩して倒れて……ウチの人間とは思えなかったからな。


「ひ、酷い零さん!!」
「お前のその顔の方がよっぽど酷いぞ。」
「それが恋人に言うセリフですか――!?」
「黙れ。」
「ウッ……。」


一言告げるだけで静かになる辺り、まるで犬だな。
不満げに口を閉ざすこの表情はなかなかイイ。


「ナマエ、」
「……。」
「お前、寝てただろ。」
「寝てません!」
「……。」
「……ほ、ホントに、寝てないよー?」


コイツ、本当にウチの人間だよな。
表情が変わり過ぎだし、声色も平常心を保てていない。
まったく、呆れたやつだ。


「終盤に眠くなるのは理解できるが、序盤から寝てただろ。」
「だから寝てないってば!」
「なら15時45分に切り替えた事件内容はなんだった。」
「え゛……。」


まあ、切り替えていないが。


「……あ、お、」
「あお?」
「オーストラリアでのテロについてだよね知ってる!」
「その件は前回の会議の話題だろ。」
「冗談だってばモー!」
「……。」
「……ゴメンナサイ。」


はぁ。


「うう、零さんが冷たい。あんなに私を抱きしめて離れなかった零さんが冷たい!」
「俺の枕を涎で汚すからだろ。」
「涎なんて垂らしてないよ!」
「まあ、そんなことはどうでもいいとするか。」


さっさと本題を終わらせて俺も帰るとしよう。
あまりここに長居するつもりもない。


「ナマエ。」
「な、なに……?」


また何か言われるのでは、とビクついているこいつは本当に面白い。
いつまでだっても、飽きない女だ。


「今夜あいてるだろ、お前の家に行く。」
「え?」
「じゃあな。」
「えぇえっ!? ちょ、待って零さん! 今部屋汚いから無理ッ!」
「いつも汚いだろ。少し整理させておけよ。」


そうだ。風見に頼みたいことがあった。
危うく忘れるところだった。早めに伝え済ませてから行くか。


「零さんっ、」


袖口を引っ張られたかと思えば、頬にナマエの手が当たった。
こいつ、また指ケガしてる――。


「…………。」
「…………。」
「……〜〜〜!」
「フッ、」


大方、俺が振り向いた際に頬にキスでもしようと思ったんだろう。
そんなことお見通しだって、前にも言った気がするんだが。


「ば、ばか!」
「お前がしたいことを、俺からしてやっただけだが。」
「ッ、」


自身の頬を抑えて顔を赤くする姿は昨夜を彷彿とさせる。
あの時はこれ以上に赤くして、目元も涙で濡れていたが。


「ナマエ、飯期待してるぞ。」
「がんばる……。」


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