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Origin.


微精霊の輝き


ジュード君が囮となる作戦は、アルヴィンの援護射撃とミラの素早い動きで成功した。


「もう、心臓止まるかと思った。」
「大げさだよ、ナマエさん。」
「あのね、無理しないの。気が気じゃなくなるでしょう。」
「うーん。でもこの場合は仕方がない気が……。」
「仕方がなくない。本当に、無事で良かった……。」
「ナマエさん……。」


ぎゅって抱き寄せれば、ジュード君も腕を回してくれる。
いつも強引にやったら恥ずかしそうに離れていく癖に、こういう時だけ酷いなぁ。


「!、この感じ…イル・ファンで感じた気配……?」


ミラのその言葉にそっとジュード君を離す。
そしてミラの視線の先には、紫色に輝く不思議な術式があった。

この術式によって先への道が塞がれており、その奥には――


「クレイン様!」


何台もの機械からマナが上空にあるクリスタル一点に収集されていく。
そのマナは、今まさに閉じ込められているクレインさんたちのものなのだろう。


「やはり人体実験を行っていましたか。」
「今の、研究所でハウス教授を殺した装置と似ているんだ!」
「ここでも黒匣の兵器をつくろうというのか?」


!、黒匣?
黒匣だって……?


「黒匣が、教授を殺した? じゃあ、やっぱり教授を殺したのは――」
「ナマエ……?」
「どしたのー?」
「…なんでもない。それにしてもこんなものを作っていただなんてね。」
「私たちを追うのをやめた理由がこれか。くだらぬ知恵ばかり働く連中だな。」
「……展開した魔法陣は閉鎖型ではありませんでした。
余剰の精霊力を上方にドレインしていると考えるのが妥当です。」


どうやらじじ様には解決策が浮かんだようで。


「谷の頂上から侵入して、術を発動しているコアを破壊できれば。」


それなら、やるべきことは1つしかない。
私たちは大きく頷き、すぐさま上へと目指すことにした。

なんども崖を登り、戦い、疲労が重なっていく中で、なんとか頂に辿り着く。
けれど、そこから吹き荒れる膨大なマナが、私たちの侵入を拒んでいた。


「どうするよ?」
「とは言っても、この高さだし……。」
「時間がありません。噴き上がる精霊力に対して魔法陣を展開します。
それに乗ってバランスをとれば、無事に降下できるかもしれません。」
「つまり、飛び降りると?」
「ってことは、コアを狙うチャンスは1度か。」


アルヴィンに頼るしかない、……ってことになっちゃうのね。 


「……行こう。皆を助けなきゃ。」
「あぁ、他に手はない。」
「ふふ、なかなか度胸のあるお方だ。」
「じじ様を信じているから、だよ。」
「おや、ではジジィも頑張らせていただきますよ!」


じじ様の詠唱が始まり、すぐに紙飛行機に酷似した魔法陣が展開された。
それに飛び移り、不安定な状態でゆっくりと降下していく。


「っく、……。」
「バランスが、悪ィな……!」
「皆さん、しっかりと掴まってください!」


予想以上に噴き上がる力が大きく、魔法陣は大きく揺れる。
けれど確かに降下はできていて、私たちの目に輝くコアが映った。


「あれがコア…!」
「アルヴィン!」


頼みの綱であるアルヴィンが銃を構える。


「だが、こう揺れちゃ……!」
「これなら!」
「……気がきくな!」


ナイスジュード君!


「――、当たった!」


ジュード君が揺れる銃口を定めてくれたおかげで、弾がコアを破壊した。
パリィンっと音をたててコアが粉々になると、噴き上がっていた精霊力も収まっていく。

そして、民やクレインさんを閉じ込めていた装置の鍵も自動で開く音が聞こえた。
同時に、おぼつかない足取りながらもぞろぞろとカラハ・シャールの民が出てくる。
その中には、確かにクレインさんの姿もあった。


「旦那様……!」
「良かった、…無事みたい。」
「助かったぜ、優等生。」
「…うん!」


これで、とりあえず一件落着――と思ったら、


「上見て、みんな!」
「!、危ない、下がれ!」


先程までコアがあった天井部が光り輝いたかと思うと、まるで蛹が孵化したかのように大きな成虫が現れた。
それも、見たこともない姿で、綺麗な光を放ちながら。


「この感じ、どこかで……。」
「分析は後にしてくれ!」
「今はコイツを倒そう、攻撃範囲が広いから気を付けて!」


槍を手に駆けだす。
初めてみた魔物に苦戦を強いられるも、数の勝負で決着はついた。

大きな魔物は光の輝きを失わないまま、地面に倒れる。


「はぁああああ!」
「っダメだよ、ミラ!」
「なんのつもりだ!!」


トドメをさそうとしたミラの動きを止め、ジュード君はじっと魔物を見つめる。
すると、魔物からきらきらとした粒子が舞い上がった。


「よく、感じてみてよ。」
「……なに?!」
「微精霊だよ。」
「おぉ、…これは…。」
「すごいすごーい!」


そのまま、微精霊たちは宙へと消えていく。
その光景はとても美しくて、綺麗で、……思わず感動をしてしまうほどに。


「――…きれい、」



(クレインさん、大丈夫ですか?)
(え、…えぇ、…なんとか…。)
(じじ様、早く街の人たちも帰してあげよう。)
(えぇ。到着し次第、検査をした方がよろしいですね。)
(じゃ、出発!)

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