1周年記念代打 | ナノ

Origin.


 修行と修行着と好み


最初こそ感覚は掴めなかったが、次第にナマエは薪を割るそのリズムを身につけた。
綺麗な木々の断面が見えるたびにほんのりと微笑みが浮かぶ。


「よし、いい感じだ。」


まだ何本か残っているものの、もうすぐで薪も割り終える。
これを命じた彼はいったいいつになったら戻ってくるのだろうかと、額に流れた汗を拭いた時だった。


「何をしている。」
「!」


びくっ、とナマエの体が跳ねあがった。
そして恐る恐る、声の聞こえた方向へと視線をあげる。


「……栄斗…。」
「宿舎にいないと思ったらこんな山奥にいるとはな。さすがの俺も探した。」


軽い身のこなしで大木の枝から舞い降りてきた栄斗は、散らばった薪とナマエを交互に見つめて顔を歪めた。


「下手な切り口だな。」
「なっ、う、うるさい。だんだん上手くなっていってるんだ!」
「で、なんだその格好は。俺を喜ばせるためのサービスか何かか?」


ぼんっ。
ナマエの顔は一気に赤くなった。
そうだ、今の今まで忘れてしまっていたが自分はレオタードを着ているのだ。
普段の私服よりも、自分の聖衣よりも明らかに肌色が多いこの服装。

一番見られたくなかった人物に、凝視されている…!


「こっ、これ、これはだな!」
「ナマエ、終わったか。」
「げげげ玄武さん!」
「玄武……。」
「ん? 狼座の栄斗か。」


玄武の登場に、栄斗の目は一気に鋭く細まった。


「どういうことか、説明してもらおうか。」
「栄斗、お、落ち着いて。な、落ち着こうか!」
「俺は1人しか見れないからな。」
「は?」
「違う、玄武さん違う!」
「どういうことだ、ナマエ。」
「だ、だからだな!」


ナマエが慌てる中で、玄武は腕を組んで首を傾げ、栄斗は腰に手を当てて睨みを利かせていた。


「――修行?」
「そ、そう。玄武さんにつけてもらっていて……。」
「なんでその格好なんだ。」
「これは玄武さんが、……気合が入るからって……。」
「気合だと?」
「……はい。」
「…………。」
「ま、まじまじと見ないでください!」


ついつい敬語になってしまう。
栄斗の視線は自分以外には向いていなくて、身体が急激に熱を帯びていた。
しかもここには玄武もいる。


「馬鹿らしい。」
「っ!」


栄斗は吐き捨てるようにそう言った。
決して自分の姿を見て褒めてもらいたかったというわけではないが、まるですべてを否定するようなそれはナマエの心に傷を与えた。
思わず、顔を俯ける。


「レオタードなんてぬるいぞ!」
「…………は?」
「甘いな玄武。コイツの場合はレオタードなんぞよりも、私服の半袖短パンが一番似合っているのだ。」
「え、ちょ?」
「甘いのはどちらだ。古くより女聖闘士に似合うものはレオタードと決まっている。」
「お前はナマエの修行着を見ていないからそんなことを言えるんだ。あれこそ至高そのもの。」
「おい。」


何かがおかしい。


「お前は何も分かっていないようだな!」
「ふん、分かっていないのはどちらだ。」


むしろどっちも分かってないよ。


「僕の修行、……。」


僕は強くなりたくて来たのに。


「お前も、そんな恰好より普段着の方が良いだろ。」
「いつでも普段通りに行くと思うな。異なる状況下において如何に自分らしくいられるかが大事だ。」


肩は栄斗に抱き寄せられ、腕は玄武に掴まれる。


「どうしたこうなった。」


修行は、続きも、終わりもしなさそうだ。



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セラ様に捧げます栄斗vs玄武ギャグ夢。
無印女性のような太腿こそが至高。



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