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Origin.


 甘い言葉に囁かれ


ぐっとその身を抱かれ、ナマエは瞼を瞑った。
服越しにでも分かる栄斗の鍛えられた体に、やけに胸が高鳴る。


「何をそんなに顔を赤くする?」
「っんなに近くに顔があったら、当然だろっ…。」
「近く、な……例えば、これぐらいか?」
「んっ…、」


栄斗は口角を上げたまま、彼女の耳元に口を寄せた。何もしてなくても届く、栄斗の吐息。
耳の中に入り込んでくるその熱にナマエの体は震えた。ぽろり、と閉じた瞼から涙が頬を伝う。


「はるとぉっ…、」
「なんだ?」
「やだ、…もうこれ以上はっ……、」
「……。」


栄斗は初めて困ったように眉を下げた。
だが、すぐにその表情は消し去り、彼女の頬を撫でる。
突然優しい手つきになった栄斗に、ナマエはゆっくりと目を開いた。


「…少しいじめすぎたか。」
「……馬鹿っ!」
「ふ…普段のお前からは考えられない反応を示してくれるもんだから、ついな。」
「……僕が耐性ないの知ってるくせに。」
「あぁ、知っているとも…俺には特別それがないのもな。」
「…………。」


栄斗の言葉に、ナマエが口を閉ざす。


「……ナマエ。」
「…な、なに……、」
「いいことを教えてやる。」
「う、うん…。」
「一度しか言わんぞ。」
「何…?」
「……。」
「………。」
「……光牙たちがこっちに来るぞ。」
「え? …はっ、えぇっ!?」


思いもよらぬ栄斗の発言に、ナマエは声を上げた。
そう言われればゆっくりと光牙と蒼摩の小宇宙が近づいてきている。


「ま、まさか……。」
「覗きにきたな、奴ら。」
「お前が言うなぁっ!!」


ナマエが栄斗を叩こうとするも、その手は宙をはたいた。
同時に彼の温もりが消える。栄斗は瞬間的に木の枝に移動していた。


「仕方がないから、俺が足止めをしといてやる。そのうちに着替えとけ。」
「なっ、…。」
「奴らに見られたくないなら、早くしろよ。」


そういって栄斗はすっとその姿を消した。
ぽつんと湖に取り残されたナマエは眉を下げる。


「……体が冷えてきた……栄斗のせいだ。」


あんな温かさを与えといて逃げるだなんて。


「……光牙と蒼摩のせいでもある。」


いい雰囲気だったのに邪魔しに来て。


「……なんか、ムカついてきた!」


これは、彼らに鉄拳を下すしかない。
ナマエはぐっと拳を握ると、すぐさま湖から出た。


一方で。


「……光牙と蒼摩……どこか行っちゃった。」
「もしかして、覗きに行ったんじゃないわよね……?」
「! ナマエが危ない…!」
「行くわよ、アリ――」


 「「うわぁぁあああああああああ!!!」」


「……心配する必要、なかったみたいね。」
「……うん。」



End.
アトガキ



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