頂き・捧げもの | ナノ

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 Let's Shopping!


とある昼下がりの双児宮。
ソファに寝っ転がるカノンの傍らには、雑誌を読むナマエの姿があった。
今日のカノンは、黄金としての執務も海龍としての執務も休みだ。
そんな珍しい日に、仲睦まじい恋人はゆっくりと時を過ごしていた。

と、カノンが思い出したようにナマエの方に視線を移す。


「そう言えば、奴は今夜帰ってこないぞ。」
「あら、そうなの?」


奴、とは言わずと知れた双子の兄サガのことである。
カノンは体を起こしてナマエの身を自らの方に引き寄せれば、鼻で小さく笑った。


「大好きな仕事と一夜明かすそうだ。」
「サガも大変ねぇ……。」
「ふん、こっちとしちゃ好都合だがな。」
「んもう……あ、」
「あ? なんだよ、急に。」


ナマエの首筋に顔を埋めて、ラッキーだとほくそ笑むカノン。
このまま襲ってやろうかと考えていると、ナマエもまた何か思い出したように声を漏らした。


「買い出し、行かなきゃ。そういえば冷蔵庫に何も入っていないのよ。」
「別に食わなくったっていいだろ。」
「いいわけないでしょ。」
「……ったく、分かったよ。」


カノンは小さく息をつけば、頭を掻き立ち上がった。
ナマエはそんなカノンを見上げ、微笑んだ。


* * * *


こうしてカノンと二人きりで出掛けるのはいつ以来だろうか。
ナマエはカノンの腕に自らのを組みながらアテネ市街を歩いていた。
今日は一週間中の休日でもあるため、辺りには多くの人が往来している。


「んで? 何買うんだ。」
「んー……何買おっかなぁ。」


カノンの問いに首を傾げて返せば、彼ははぁと息をついた。
だがその表情は柔らかい。


「とりあえず、歩いていろいろなものを見ましょ。」
「おいっ、引っ張るな……!」


ナマエは笑顔でカノンの腕を掴み歩き出す。
カノンはそんな彼女に小さく笑みをこぼした。



「…ぁ…、」
「? どうした?」


と、暫く歩くとナマエが足を止めた。そして近くの露店へと足早に近付いていく。
らっしゃい、と気前のいい店主が笑顔で迎えた。


「わ、綺麗……。」
「簪か…、」
「お、アンタは知ってるのかい? 
嬢ちゃん、こりゃあ日本っつー国のものだ。なかなか美しいモンだろ?」
「アテナ様が育った国のものね。えぇ…とても綺麗。」


ナマエは1つの簪を手にする。ちりん、と美しい鈴の音が鳴った。
カノンは沙織の付き添いで何度か日本へも赴いたことがあるため簪を知っていたがナマエはどうやら初めて見たらしい。

恍惚とした表情で簪を見つめる##NAMAE1##に、カノンは懐からお金を取り出し、それを店主に差し出した。


「これ、もらうぞ。」
「へい、ありがとうございやす!」
「え、カノン?」


ナマエが目を丸め此方を見た。カノンは視線を逸らしながら


「そういうの持ってるのもいいだろ。」
「で、でも悪いよ……。」
「いいから受け取れ。それとも俺からのは受け取れないとでも言うか?」
「ううん…。ありがと、カノン。」
「…ほら、そろそろ食材買って帰るぞ。」
「えぇ。」


帰宅してからゆっくりと挿してみようとナマエはその簪を愛おしそうに撫で、しまった。


――……


「さてと、こんなものでいいかなぁ。」
「よし、なら帰るぞ。」


カノンとナマエ、食材の入った紙袋を一袋ずつ手にし、2人は帰路についた。
はじめカノンが荷をすべて持とうとしたが、

「それじゃ腕組めないじゃない。」

とナマエが言ったために、共有することになったのだ。
自らの腕から伝わってくる愛しい人の温もりに、2人とも小さな笑みを零していた。

アテネ市街を抜け、聖域へと人通りの少ない道を歩む。
陽は落ち始め、地平線の彼方に顔を半分見せている状態だ。橙色の光が辺りを彩る。


「今日はありがとね、カノン。」
「偶にはこういうのもいいだろ。」
「凄く楽しかった!」
「…俺もだ。」
「きゃっ、」


ふふ、と満面の笑みを浮かべるナマエに、カノンはナマエと絡まる腕を引けば、


「んっ……ふぁ…、」
「…っは……、」
「っ…んン……あッ…。」
「…だが、まだ1日は終わってないぞ。」
「っえ…?」


唐突な口付けに頬を染めたナマエに、カノンはにやりと口角を上げた。

そう、まだ夕方なのだ。1日はまだまだ終わらない。
カノンはナマエの耳元に唇を寄せれば、吐息を混ぜながらそっと囁く。


「"夜"はこれからだろう……?」
「ッ…ぁ、…ば、ばか…。」
「くくっ、ほら、さっさと帰るぞ。」


カノンはナマエの腰に手を回し、歩き出した。



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立花様に捧げます相互記念夢。
「おかえりデメテル」にありますイラスト「カノンと買い物」を参考に作らせていただきました。
甘…くなっているでしょうか?
これからどうぞ、宜しくお願い致します。



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