頂き・捧げもの | ナノ

Origin.


 柔らかな目覚め。


ふと玄武は目を覚ました。少しだけ体がだるく、頭もすぐには回らない。
ゆっくりと瞬きを数回すれば、腕の中にいる彼女の温もりを感じた。
玄武は目を細め、彼女の柔らかな髪を撫でる。


「…んぅ……、」


起こしたか? そう思ったが、彼女は少しだけ身をよじるだけで、玄武の胸板に頬を寄せた。


「ナマエ。」


小さな声で愛しき女性の名を呟く。その時彼女が口元を緩めたのは見間違えではないだろう。
玄武は困ったように、されど嬉しそうに彼女の額に口づけを落とした。


「起きているんだろ。」
「……バレた?」


へへ、と無邪気な笑みを見せる彼女。
玄武はあぁ。と小さく返して彼女の頭を撫でる。


「ん。玄武にこうして撫でてもらうの、凄い好き。」
「そうか。」
「うん。」


ナマエは背中に回していた腕を玄武の首へと移動させ、自らのと彼との額を合わせた。
至近距離で交わる視線に、昨夜の情事を思い出す。
お互い冷めぬ熱を帯びながら、唇を重ね合わせた。


「ん、…」
「……、」
「…んぁ……っは!」


唇から零れる吐息が脳内を麻痺させる。
玄武はナマエの唇に啄むようなキスを送りながら、ゆっくりと彼女の体を撫でた。
ぴくりと反応を示す正直なそれに口角を上げながらキスを続ける。


「んっ……ぁ、待って…玄武っ、」
「……どうした。」
「…朝ごはん、食べてないわ。」
「いるのか?」
「いらないの?」
「……。」
「ダメ、ちゃんと食べなくちゃ。」
「……。」
「ね?」
「……あぁ。」


その気にさせたのはそっちなのに。
だが今は彼女の言うとおりにして、後でまた楽しむことにしよう。
玄武はそう思いながらナマエの首筋に痕を残して、上半身を起こした。
その動作で持っていかれたシーツをナマエは咄嗟に掴んで引き寄せる。


「んもう、」
「悪い。」
「思ってないでしょ?」
「……まぁな。」
「ふふっ。」


短い言葉を紡ぐだけで心が温かくなる。


「玄武。」
「なんだ。」
「好き。」
「……。」
「大好き。」
「……。」
「愛してるわ。」
「あぁ。」


最後の言葉だけに反応を示せば、またナマエはもう、と笑みをこぼした。
そして散らばる服をかき集め、身につければ2人でリビングへと向かう。


「何食べたい?」
「な「何でもいい。」………。」
「ふふっ。」


ナマエに言葉を奪われる。
軽く睨めば彼女は嬉しそうに微笑みながらエプロンをつけて背を向けた。


「これ食べたら、ちょっと散歩に行こうよ。」
「散歩? どこへ。」
「どこへ行くか決めないから散歩でしょう? たまにはいいじゃん。」
「そうだな。……たまにはいいか。」
「うんっ! それじゃ、早めに作っちゃうね!」


どこか落ち着いていて、されど少女を思わせる彼女を玄武は目を薄めながら見つめていた。

どうやら朝ごはんの後もお預けをくらうようだ。
それでもどことなく嬉しいのは、やはり相手が彼女だからなのであろう。
玄武は彼女の手伝いをしようと隣に立った。



END
アトガキ



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