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 離れて駆け寄って


「ぐぅっ……。」
「退け時貞。お前との勝負はまたの機会につけてやる。」
「何を、我はこれぐらい…!」


先に膝をついたのはなんと時貞の方であった。
戦闘中、拘束されていたナマエの身は邪魔だと悟ったのか、投げ飛ばされる形で自由になった。
そこから栄斗の本領が発揮し、彼を上回る力を見せつけたのだ。


「……覚えているがいい。そちらの女もだ。」
「次は、負けない…!」
「…ふんっ、」


時貞は睨みを利かせながら、音もなくその場から立ち去った。


「――はぁぁあ……。」


ナマエの体から力が一気に抜け、思い溜め息が口から漏れる。
と、影がかかりそっと顔をあげた。


「……栄斗……。」
「だから言っただろ、今は下りるべきではないと。」
「っ…、」
「嫌な予感も当たるしな、まったくついてない。」


栄斗は纏っていた聖衣をといて、眼鏡を押し上げた。


「で、何か言うことはないのか。」
「…………、」
「ナマエ。」
「……ごめ、んなさい……。」
「……これ以上、単独で動くな。」


呆れたような口調に、ナマエは再度顔を俯ける。


「…やっぱり、僕は邪魔…だよね。」
「……はあ。」
「っごめ…!」


栄斗はそっと片膝をついて、ナマエの頬に手を伸ばした。
そのまま顔をあげられ、視線が交わる。


「誰が、邪魔だと言った。」
「…でも……。」
「お前を連れて歩いて時貞と戦闘になった時、守りきれる自信がなかった。」
「…栄斗?」
「決してお前を邪魔だと言ったつもりではなかったんだが…、」


お前はそう捉えてしまったんだな。
微かに眉を下げる栄斗の表情に、ナマエははっと息を呑んだ。


「ご、め…僕、……僕、勘違い、して……。」
「まったくだな。お蔭で時貞に出会うわ、拘束されているわ、びっくりだ。」
「…う、」
「だが、……無事で良かった。」
「――栄斗。」


普段は余裕綽々でからかうように接してきている栄斗が、今はとても優しい手つきで抱きしめてくれている。
ナマエはそのあたたかな温もりに、じわりと涙ぐんだ。


「っ、……栄斗っ…。」
「怖かったか。」
「…ん、少し…だけ、……ごめ、」
「謝るな。俺たちは聖闘士だが、それ以前に人だ。…怖くて当然だ。」
「栄斗、」
「すぐに助けてやれなくて、悪かった。」
「ううん、…栄斗が来てくれたから、僕は……。」


背中に腕を回し、ナマエは瞼を閉じた。
もし栄斗が来てくれなかったらと考えると今でもぞっとする。


「――…ほら、泣きやめ。」
「っ泣いてなんか、…。」
「ならその泣きそうな顔を引っ込めろ。そんな顔で隣を歩かれると俺まで恥ずかしくなる。」
「え…?」


ゆっくりと顔をあげると、栄斗は綺麗に微笑んでみせた。


「ゆっくり、したいんだろ?」
「栄斗……うんっ!」


単純だな、なんて笑う栄斗の言葉は耳を通らず、ナマエは涙を拭った。


「あ! そうだ、栄斗!」
「どうした。」


立ち上がったナマエは、腰に手をあてて栄斗を睨む。


「僕の取り柄は威勢がいいだけとか!」
「あぁ、」
「僕の顔が不細工だとか!」
「それが?」
「許さないからな!!」
「実際、そうだろ。」
「む!」


栄斗はふっと笑みをこぼして、同じように立ち上がる。


「威勢の良さで町へ下りて、捕まって、酷い顔で俺を見ていたのは何処の誰だ。」
「っぐ…そ、れは……!」


口ごもると、更に栄斗の笑みは深くなる。
そして足を進め、ナマエの頭を1つ撫でた。


「ま、そんなところさえも魅力的だと、思うがな。」


そのまま、栄斗は歩いていく。


「…………え……?」


振り返り、彼の背中を見つめる。


「…………、」


次第に、熱を帯びていくのを感じた。


「――何をしてる。おいてくぞ。」
「い、今行く!!」


首を振っても、熱が冷めることはなかった。
それを持ったまま、ナマエは栄斗の元へと駆け出す。

さぁ、まずはどこに行こうか。



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74000HITリクで栄斗夢(vs時貞)を、セラ様に捧げます。
栄斗は、意地悪しながらも良い具合で甘やかしてきそう。
恐ろしいテクニックを持った忍だ……。



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