自分に無いものだから。どんなに努力しても手に入れられないものだから、見ているだけで憧れてしまって、触れたいと思ったらどうしようもなくなってしまって。

無意識のうちに手を伸ばしていてしまった。



「ナマエ」

「はい?」

「……何だ?」

「へ?」



触れてしまったものが、リヴァイ兵長の二の腕だと気付いた瞬間、身体中の血が一斉に引いていった感じがした。パッと手を離し、ザザザと勢いよく後退したものの、心臓の音が鳴り止まない。

リヴァイ兵長はと言えば掃除の為に頭に巻いていたバンダナを外し、私が触れていた腕を確かめている。



「何だ、なんか付いてたか?」

「あぁあ、いえ、その…!」

「あ?」



まさか自分の欲など口にする事も出来ず、あわあわと両手を左右に振る。そんな私を見て、余程言いにくい理由があるのかと勘違いしたのか、リヴァイ兵長は袖を捲り上げてみせた。



「リヴァイ兵長、待ってください!」

「何だ」

「だ、ダメです!それ以上は!」

「何かあるならさっさと言えばいいだろ」



そう言って不機嫌そうにずいと腕を見せられ息が詰まる。顔じゅうに熱が集まってしまい両手で顔を覆った。声にならない悲鳴を何とか腹のなかで押し込めると、指の隙間からチラリとリヴァイ兵長を覗く。

何とも言えない、眉間に皺を寄せたリヴァイ兵長と目が合う。



「……く、が…」



モゴモゴと手のひら越しに言葉を紡ぐ。ああもう言うつもり無かったのに、こんな目の前に差し出されては、次いつ私の手が出てしまうか分からない。今だって触りたくてたまらない、本当に綺麗で、美しい、



「筋肉が!素敵すぎて、目のやり場に困りますぅ!」

「は?」

「前からずっと!すごいなって思って!上腕二頭筋は勿論ですが、その腕の筋も!私は全然筋肉が無いので!」



見てくださいこの腕!と両腕を広げアピールしてみる。

リヴァイ兵長の筋肉に対する私の想いはこんな物ではない。もっともっと伝えたいことが山ほどある。リヴァイ兵長の側近に付いてから、その麗しいとも言える筋肉をずっと間近で見てきたのだから。



「あと背筋も!腕だけじゃなくて、背筋も筋が通っていて綺麗な筋肉だと思います!」



リヴァイ兵長の筋肉は人知を超えていると言っても過言ではない。汗で背中に張り付いたシャツのラインとか、腕まくりした時に見えた腕の逞しさとか、全てが素敵でまるで彫刻のように美しくて。



「だからその、見ていたらつい触りたくなってしまいまして…!」

「てめえな…」

「呆れられるのも分かってます!ごめんなさい!でもずっと前から好きなんです!大好きなんです!」

「…、」

「リヴァイ兵長の筋肉!!」



これは一体何に対する告白なのか。聞かれたら間違いなくリヴァイ兵長の筋肉が対象だ。言ってしまった、言ってしまった!と今更羞恥で顔を隠す私に完全に呆れてしまったのか、大きなため息が聞こえた。



「少しはお前も筋肉付けたらどうだ、無さ過ぎるぞ」



と同時に掴まれたのは私の二の腕。

訓令兵の時と比べたら筋肉は付いた方だと思うけれど、リヴァイ兵長と比べたらまだまだ足元にも及ばない。それにしてもまさか、あのリヴァイ兵長が私に触れるだなんて思わず、間の抜けた顔をしていたら目が合った。



「なんて顔してやがる」

「いえ、その、驚いて…」

「お前も触ったんだ、お互い様じゃねえか」

「そうですよね…お互い様ですよね…」

「……何だ?」

「あの…せっかくの機会なので、お腹も触ってもいいですか?」




(調子にのるな)
(とデコピンを見舞われた)




大体なナマエよ、てめえが俺の腹を触るってなら俺も触るぞ

え…

嫌だろ、だから諦め、

大丈夫です!はい!そんな事でリヴァイ兵長の腹筋が触れるなら喜んで!

自分で捲るな馬鹿が!!



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これは何の話しだよ(書いたの自分奴

2017.01.29