スコールの行動を迷惑だと感じたことはない。

彼は無口だから何も言わないけど、その行動は私を心配してくれているからだし、私自身スコールに助けられたことは何度だってある。

彼は強いからきっと次のSeeD試験には合格すると思う。・・正直言うと私はあんまり自信がない。だから試験までに少しでも自分の実力をあげたくて訓練施設にやって来たのに。




「足を出せ」

「・・」

「ナマエ」

「・・、」




ぷい、と視線は外したまま彼に言われたとおり足を出すと、スコールが呆れたように小さく溜息をつくのがわかった。

彼のその反応のせいで私の眉間には深く皺が刻まれることになるのだけど。




「無茶はするなと言ったはずだ」

「・・」

「訓練をする時は俺を誘えとも言ったはずだ」

「・・」




擦り剥けてしまった私の膝を、スコールはケアルをかけたあと自分が持っていた傷薬やガーゼで手早く治療していく。そんなスコールを横目にしながらも私は沈黙を貫き通す。




「・・俺に何か言いたいことがあるなら言え」

「・・」

「ナマエ」

「・・」




ぶしゅっ




「い、いったああああい!!」

「俺を無視するからだ」

「だからって消毒液そんなにかけることないでしょ!?」




擦り剥けたばかりの傷口にあろうことかスコールは消毒液をぶっかけたのだ。ヒリヒリして痛い。あまりの衝撃と突然の痛みに少しだけ視界が揺らいでしまう。

ぎゅう、と歯を食いしばってヒリヒリする痛みを我慢しているとスコールはまた小さく溜息をついた。

やったのはスコールでしょ・・!




「文句があるなら言ったらどうだ」

「・・別に文句なんてない」

「アンタは嘘がヘタだな」

「・・」




そう言って少しだけ笑いながらガーゼを傷口に貼り付けるスコール。

・・滅多に笑わないくせにこういう時は笑うんだから。

だいぶ腑に落ちないところがあるが、これ以上沈黙を続けてもきっとスコールは引いてくれない。私は視線は逸らしたまま口を開いた。




「・・私さっき一人でも大丈夫だった」

「そうは見えなかったな」




勇み足で訓練施設にやって来たのはよかったのだけど遭遇してしまったのはアルケオダイノス。

今の私の実力では倒せないことぐらい分かっていたから冷気属性の魔法で追い払おうとすぐに準備したけれど、足元に転がっていた小石に足をとられてしまい無様にも私は転んでしまったのだ。




「っ・・ちょ、ちょっと転んだだけであれぐらい私一人でも倒せたもん!」

「実戦では少しのミスが命取りになる、それぐらいアンタも分かってるだろ」

「分かってる、けど・・!」

「それに俺が来なければこの程度の傷じゃ済まなかった」




たしかにスコールが来てくれなかったら膝を擦りむく程度の傷じゃ治まらなかっただろう。私の反論や意見なんてことごとくスコールに切り伏せられてしまう。

・・・・だから何も言いたくなかったのに。




「大体アンタは無茶をしすぎる。もっと自分の実力を」

「分かってる!!」




大きい声を出してスコールの言葉を遮ると、膝に包帯を巻いていたスコールの手が止まった。




「分かってる、けど・・仕方ないでしょ・・」

「・・」

「・・自信ないんだもん・・っ」




実力がないのは分かってる。自分のことだもん、それぐらい知ってる。戦闘のセンスもないし、ミスばかりする。




「SeeDになれる自信、ない・・っ」




こんなに弱いのにSeeDになんてなれるわけない。声に出して言ってみたらなんだかもっと自分が弱いように感じて泣きそうになってしまい、服の袖でぐっと目元を押さえる。

スコールがまた、小さく溜息をついた。今度こそ本当に呆れられてしまったような気がして、別の意味でも泣きたくなった。




「アンタは」

「・・っ!」




頭に軽く手を乗せられて身体がビクリと震えてしまった。そっと目元から腕を外してスコールを見ると、口元にうっすらと笑みを浮かべた彼と目が合った。




「無茶はするし、人の話は最後まで聞かない」

「え・・?」

「実力は無いな、戦闘のセンスも他と比べるとだいぶ低い。自分の武器の扱いもまだ分かっていないようだ。あと肝心なところでドジをする」




突然ぽんぽんと矢継ぎ早にダメ出しをされて言い返すこともできず聞くだけの私。しかもその内容がほぼ全部図星で気分が段々と下へ急降下していく。




「だが」

「え?」

「魔法のセンスは俺よりもいい、サポートの方が向いてる」

「・・」

「だから訓練をする時は誘え、って言ったんだ」




ぽかん、とスコールを見つめていると彼は私から目を逸らした。

そっか・・だから訓練に付き合うって言ってくれたんだ・・。自分でも気付くことが出来なかった私の戦闘スタイルにスコールは気付いてくれていたから。それを生かそうとしてくれていただけなんだ。




「さ、最初からそう言ってくれれば・・!」

「さっき言おうとしたところを遮ったのはナマエだろ」

「う・・」




確かに最後まで聞かずに遮ってしまったのは私だ。返す言葉が見つからず視線を彷徨わせていたらスコールがまた口を開いた。




「・・それが半分」

「え?」

「あとの半分は、」












過保護な彼

(気付けばいつも)
(近くにいてくれる)






ただ単純に、ナマエのことが心配なだけだ


と言う彼に私は俯くことしかできなかった






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このヒロインならゲーム沿い連載いけるかな?なんて思ったり
ただ問題はスコールが初っ端から甘い(笑)

20100408