(※ハロウィンログ)







「ナマエ、ナマエ!」

「なに?」

「今日が何の日か知ってるか?」

「さあ」




ブリーフィングルームにて。横で楽しそうに笑うザックスと、そんなザックスにあまり興味がないのかパラパラと手元にある書類を眺めるナマエの姿。


向かい側にはセフィロスが腰掛けており、ちらりと二人に視線を送ってから静かに笑みを浮かべた。




「嘘つけ、知ってるだろー?」

「知らないし、興味ないわ」




そう言い捨てながらナマエは近くにあるマグカップへと手を伸ばす。ゆらゆらと揺れるコーヒーを一口飲み込むと、うん美味しい、とにこやかに呟いた。




「ねぇセフィロス、これ淹れてくれたの誰だったかしら?」

「外にいる男だ」




つい、と視線を動かすセフィロスの後を追うと、ガラス越しに男が見える。その男は手に書類を持ち、部屋に備え付けられた液晶画面と睨めっこしている。

きっと何かメモしているんだろうな。




「へぇ・・ザックス、あの子の名前は?」

「・・カンセル、だけど」

「カンセル君かぁ」




覚えてておこうっと、と呟きながらもう一度コーヒーに口をつけると、やはり美味しいのかナマエはニッコリと微笑む。


そんなナマエとは対照的に、むっすうと不機嫌全開な表情を見せるザックス。


さすがに仲のいい友人であっても、自分の好きな人間にこうも簡単に気に入られてしまうと気に食わないらしい。

そんなザックスの様子に気付いたのか、ナマエは呆れたように溜息をつく。




「・・ハロウィンでしょ?今日」




その瞬間、ザックスの目が嬉しそうに輝いたのはきっと気のせいではない。さっきまでの表情が打って変わって、今度は笑顔が全開である。


そんなザックスの笑顔を横目に見ながらナマエは自分の荷物をゴソゴソと漁りだす。




「なんだよ知ってんじゃん!」

「・・」

「じゃあさ、ナマエ!トリックオア」

「はい、どうぞ」

「え」




お決まりの言葉を言い切る前に、自分の目の前に置かれた物に唖然とするザックス。




「え、いや、ナマエ、これ・・」

「お菓子をくれなきゃ悪戯するぞ。ってことで悪戯なんて絶対にイヤだからお菓子」

「えー・・」

「あら、なにか文句があるのかしら?」




さも当然のように言うナマエに何だか不満の隠せないザックスだが、大人しく彼女がくれたオレンジ色のパンプキンパイを手に取る。




「普通さ俺が、トリックオアトリート!って言って、お菓子を持ってなかったナマエが俺に悪戯される、っていう流れが普通だろ?」

「もし私が今お菓子を持っていなくて本当に悪戯されるとしたら、そうねぇ・・・・ザックスの両腕、バッサリいくかしら?」




そう言ってニッコリ笑うナマエにザックスは引き攣り笑いを浮かべた。

黒のスーツをビシッと決めて己の武器に手をかけるナマエは迫力が違う。きっと今ならモンスターも泣いて逃げ出すだろう。




「あ、あのさ・・これナマエの手作り?」




話しを逸らすように上擦る声で聞けば、ナマエは自分の武器から手を離し、ふいっとザックスから視線をはずした。




「別に、ここに来る途中で買っただけ、よ・・」

「来る途中?」

「ほら、八番街に美味しいケーキ屋さんがあるでしょ!」




あまり女性が好むような甘いものには興味がないザックス。八番街のケーキ屋と言われても記憶が乏しい。

必死に頭の中で記憶を巡らせて、ようやくぼんやりと思い出せるぐらい。




「ここ周辺にそんな所あったっけ?」

「ザックスが知らないだけであるの!」

「そっか・・そこのか」

「・・なに、ダメなの?」




ジロリ、と睨みつけるとザックスは一瞬キョトンとしたがすぐにいつもの明るい笑みを浮かべた。




「いーや、全然!貰えると思ってなかったし!」

「・・」

「さんきゅナマエ、大事に食うから!」





本当は手作りがよかったんだけどな!


そう言ってもう一度ニカッと笑うと、パンプキンパイを片手に上機嫌な声でカンセルー!とさっきまで気に食わなかったはずの友人の名前を呼び、彼のもとへと駆けていった。














(・・何かしら、セフィロス?)
(いや?)
(ならニヤニヤしないで)
(お前の言うケーキ屋は八番街ではなく六番街のウォールマーケットにあるそうだ)
(・・!)







英雄は単純じゃない










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ザックスもそのうち
カンセルあたりに言われて気付きます^^

はっぴーはろうぃん!


20091025