「え、これから?」
「・・」
電話中のザックスを遠巻きに眺めている私。今日は二人で八番街のファーストフード店を回ろう!なんて約束をしてた。
ファーストフードはカロリーが高いから前日から食べ物に気を使って昨日は、お昼ご飯のデザートに食べていたケーキも我慢したし、夜ご飯も野菜ばっかりにした。
ザックスにそれを話したら、やる気満々だな!なんて言って笑ってくれて、私としてはその笑顔が見れただけで昨日我慢したかいがあったな、って思ったんだけど。
「いや、仕事っていうか・・うん」
電話越しに聞こえてくる高くて透き通った声。きっと電話の相手はスラムに住んでる可愛らしいあの子なんだろうな。・・なんだか胸の辺りがモヤモヤとして、嫌な予感がする。
「うん・・いや、まあ」
「・・」
ああ、私がこのまま黙っていたら彼はどっちを選ぶのかな?やっぱりスラムのあの子がいいのかな?可愛くて優しい子だもんね。だけど私は・・。
「ザックス、」
「え?」
「いいよ、行って・・・・行っていいから」
そう小さな声で呟けば、ザックスは少しだけ目を見開いて申し訳なさそうに顔を歪めた。そんな表情をしてくれただけで私は満足だよ。・・やっぱり、すぐに走っていかれるのは嫌だし。
一瞬、思ってしまった。私のことを選んでほしい、って。・・そんなことを思うような間柄ではないのに。私たちはただの友達、だから。
「私との約束は、いつでもいいから・・」
「でも、」
あくまで私との約束を優先させようとするザックスに「ほら早く行かないとー」と言いながら笑って背中を押す。
「悪いナマエ!絶対に今度埋め合わせするから・・!」
「はいはい、期待せずに待ってまーす」
意地悪く笑って、手をヒラヒラ振るとザックスは眉を下げて笑ったあと、スラム行きの駅へと走っていった。
「・・お腹、すいたなあ」
せっかく昨日、ケーキまで我慢したのになあ・・なんて一人苦笑いを浮かべて考える。今日は昨日のぶんも食べてしまおうかな。
あー、でも埋め合わせするって言ってくれたから今度は一緒に行ってくれるかな?それだったらこのまま我慢し続けようか。
「・・」
いいよ、別に。ザックスは私との約束を優先しようとしてくれたから。ほんの少しでも私のことを考えて迷ってくれた。
それだけで私は十分だから。嬉しかったから。
だから、だから。私の心、お願いだから・・
悲しいなんて 思わないで
(歪まないで、視界) (溢れないで、涙)
私とザックスの関係ってなんだと思う?なんて聞いたら周りの人は、きっと言うんだろうな・・
仲のいい友達、って
−−−−−−−−−−−−−−− 『友達以上恋人未満』拍手ログ 20091209
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