「どうすればいい?」

「どうしたいの?」

「分かんねえ」

「私だって分かんないよ」

「・・」



はぁ、と困ったように溜息をつく男。人の上で溜息つくなんて失礼なやつだな、とちょっとだけ睨んでみる。



「そんな顔すんなよ」

「したくもなるよ、いきなり人に飛び掛ってきて」

「だから、ごめんって」

「・・」



苦笑い交じりに謝るザックスからぷい、と顔を背ける。ごめん、なんて言われたら怒れなくなっちゃうじゃない。

人の家に来るなり飛び掛るように押し倒して、どうすればいい?なんて言われても私が知るわけないじゃない!こっちがこの状況どうしたらいい?って聞きたいぐらいよ!

大体こいつ仕事はどうしたんだ?仮にもソルジャーでしょう。こんなところにいて良いわけがない。



「ねえザックス、とりあえずさ」

「ん?」

「私の上から降りて、ゆっくり話そうよ」

「それは、嫌だ」



・・なんなんだ。どうすればいい?って聞くから、十中八九正解がもらえるような答えを出してあげたというのに!

もう聞かれたって答えてあげない!せっかく言ってあげた私の意見を踏みにじるようなやつ知らない!・・とは言っていられない状況なのが悲しい。

嫌味をたっぷり込めて溜息をついた。ちょっとは私が迷惑がってることに気付けばいいよ。今日は辛い仕事から開放される唯一の休日なのに。これは不測の事態だ。

今日のことを予測できるような、そんな凄腕の占い師がいたら私はその人のところに通いつめたっていい。それぐらい今の状態は私にとって不測の事態なんだ!



「なあ、ナマエ」

「・・なに?」

「顔が怖いって」

「この状況で私に笑えと?」

「まあ出来れば」

「無理です」

「だよな」



ははは、と申し訳なさそうに笑うザックスになんだか胸が痛くなる。・・いや私は悪くない。悪いのはザックスだ。なのにこんな顔されたら笑ってあげたくなるじゃないか。どうしたんだ私は。



「今日さ、」

「・・」

「ずっと考え事してたんだ」

「・・へえ、珍しいね」



ザックスが考え事なんて、と言葉を続ける。「だろー?・・あーいや、そうじゃなくて」と表情をコロコロ変えるザックスを私は見上げるだけ。



「ナマエ、今日は仕事休みじゃん?」

「そうだね」

「だから、ナマエいないのかー、つまんねーなー、って考えて」

「・・そうですか」

「そしたら急に会いたくなって」

「・・は?」

「気付いたらここに来てた」



で、飛び掛ってた。と笑って言うザックスを私はきっと間抜けな顔で見つめていると思う。

私が休みって話しから、どうして結果がこうなった?そう言ってもらえるのは嬉しいけど・・なに、なんか顔が熱い。



「ナマエ、俺さ」

「な、なに・・?」

「好きみたいなんだ、お前のこと」






(凄腕の占い師だって)
(予測できない)




なあ、どうすればいい?

し、・・知らないっ!



(とりあえず私の熱い顔を隠させて)



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犬って好きな人には襲い掛かる勢いで飛びついてきますよね、って話し
20091120