私はこの星からすればどれぐらい小さな存在なんだろう?
星からすれば私の一生なんて瞬きにもならないほど短いもの。私のことを知っている人なんて少ししかいない。世界中の人を知りたい。
だからもっともっと、私を知ってほしい。
もっともっと、私のことを分かってほしい。
もっともっと・・
「ってそんなこと、考え出したらキリがないよね」
「・・」
焚き火の前にクラウドと二人。今日の見張り係は私たちで他のみんなはハイウインドの中で眠りについてる時間。
「・・また突然だな」
パキッと近くにあった枝を手ごろなサイズに折り、焚き火の中に入れるクラウドの表情は少しだけ笑っている。
「まぁ、ナマエらしいけどな」
「クラウドならそう言うと思った」
私がそう言うと青の視線がこちらに向く。驚いたような不思議そうな、そんなクラウドの瞳。
「最近のクラウドは否定しないもん」
「そうなのか・・?」
「うん、やっぱり気付いてないんだね」
クラウドは旅の始まりのときとずいぶん変わったと思う。最初のころは、人の意見をすぐ否定して、挙句の果てには興味ない、なんて言う冷たい人間だったのに今はそんなこと言わない。
聞いてくれる、みんなの意見を。少しだけど興味を持ってくれる。たまにだけど、微笑んでくれる。‥‥そういうのを見てるとなんだか胸の中が温かくなる。
「クラウド優しくなったよ」
「・・どうだろうな」
「本当だよ、前と違う!すっごい優しい!」
「・・・・ナマエにだけだろ」
「え?」
「・・なんでもない」
聞き取れなかった言葉を聞き返してもクラウドは答えてくれない。でもクラウドの表情が穏やかだったからあまり気にならなかった。
パチパチと静かに音を立てる火。見上げた空はまだ真っ暗で夜は深い。
「たくさん旅して、色んなもの見てきて、私の知ってた世界って狭いなーって思ったの」
「・・」
「世界はこんなに広いんだね」
「あぁ・・」
「なのに私を知ってる人はこんなに少ないんだね」
無言のまま私を見つめるクラウドの瞳を私もジッと見つめ返す。
クラウドは私をどれだけ知ってるかな?ティファは?バレットは?みんな私をどれぐらい知ってるのかな?‥‥欲張りな考えに少しだけ笑ってしまった。
「ふふ、欲張りかな?」
「意味が分からないんだが・・」
「私ね、みんなに私のこともっと知ってほしい」
「・・」
「せっかく生きてるんだもん、こうやって一緒にいるんだもん・・知ってほしい」
「みんなに?」
「できれば世界中の人に、かな?」
欲張りかもしれないけど本当にそう思う。私も世界中の人を知りたい。
それが無理なら・・せめて知り合えた人たちだけ・・いま一緒にいる仲間だけでいいから、私のことをもっと知ってほしい。
「・・知ってる」
「え?」
「ナマエのことなら知ってる」
「クラウド・・?」
「ずっと・・見てた、から」
クラウドの顔が焚き火に負けないくらい赤い気がする。私の顔もそんなクラウドに負けないくらい赤いかもしれない。
だって、あのクラウドがこんなこと言うなんて思わなかったから。
前よりも優しくなった、って言っても・・こんな、私が嬉しくなるようなこと。
「あ、熱いね・・!」
「そう、だな・・っ‥火、消すか?」
「いや、そんなことしたら真っ暗だよ・・!」
そうか、と口ごもるクラウドと顔のほてりが消えない私。気まずいような、そうじゃないような・・胸が変に痛くて考えられない。
何か話さなきゃ、何か話さなきゃ・・!
「こ、この世界に人はどれくらいいるのかな・・!?」
「・・は?」
「きっと、すっごくたくさんの人がいるよね!そしたら私とクラウドが出会えたのって奇跡みたいな確率なんだよ・・!」
「そう、だな・・こうやって隣にいるのが奇跡みたいだな」
「だ、大事にするからね!」
「な、何を・・?」
「この奇跡、大事にするから・・っ」
一生懸命、自分の言いたいことを伝る。
みんなとの奇跡も大事にしたいけど、クラウドとの奇跡はそれ以上に大事で大切。
「世界中との奇跡、なんて規模には俺は勝てないけど」
「う、うん・・」
「ナマエのこと誰よりも知ってるし、分かってるつもりだ・・‥だから、旅が終わっても、見ていたい、って思う‥出来れば、ずっと」
「・・っ」
キミとの奇跡 (だから大事にしよう) (俺たちの、この奇跡)
「・・く、クラウド勝ってるよ!私の中で、世界規模の奇跡よりクラウドとの奇跡のほうが、全然勝ってるよ!!」
「そうなのか・・?」
「そうだよ!だから私だって、旅が終わってもクラウドのことちゃんと見てるよ!」
「ナマエ・・?」
「だって私、クラウドのこと大好きだもん!」
「え、」
「あ・・」
(や、やっぱり火は消そうか・・!) (いや、でも真っ暗に・・) (消そう!いま消そう!すぐ消そう!)
20090902
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