教室に響く楽しそうな笑い声に高鳴る胸。チラリと盗み見れば沢田君たちと話す楽しそうな山本君がいる。

その姿を見るだけで嬉しくて、なんだか心が熱くなってくる。



「まーた見てるの?」

「は、花・・!」



突然話しを掛けられ振り返れば、ニヤニヤと笑っている花とその隣に困ったように笑う京子ちゃんがいた。



「別に見てた訳じゃ・・!」

「いつも見てるくせに嘘言わないの」

「いや、だから・・!」

「もぉ花、名前ちゃん困ってるでしょ!」



私が反応に困っているのに気付いてくれたのか京子ちゃん。ああ、天使に見える。・・・・だけど天使に見えたのも束の間。



「名前ちゃんは山本君が好きなんだから、つい見ちゃうんだよ!」

「ちょ、ちょっと京子ちゃん・・!?」



教室の真ん中でとんでもないことを言った京子ちゃんを止めて、慌てて周りを見ると幸い誰も聞いていなかったみたいでホッと溜息を吐く。



「まあ気持ちは分かるけど、見てるだけじゃいつか周りに先越されるわよ」

「べ、別に私は・・!」

「ふふ、名前ちゃん顔真っ赤だよ」

「嘘・・!?」



頬に手を当てれば心なしか熱い。ダメだな私。感情がすぐ顔に出ちゃう・・ババ抜きとかでいつも負けてしまうのはこれのせいだったのか。



「わ、私は見てるだけで幸せだから・・」



そう言ったら花に溜息吐かれた。な、なによう‥!



「アンタみたいなタイプ今時珍しいわ」

「う・・」

「それが名前ちゃんだもん」



笑う京子ちゃんに「そうだけどさ」と、どこか納得いかないような表情をした花。

先を越される、っていうのはつまり山本くんに恋人が出来るっていうことで。それは私の失恋を意味する。

だけどやっぱり私は見ているだけで幸せな気持ちになるし、嬉しくなってしまうから。



「私はやっぱり、見てるだけで幸せだよ」







(あなたが笑うと)
(私も嬉しくなるの)





こうしてみていることしか出来ない毎日だけど

ふとした瞬間に目が合って、あなたが笑ってくれたら・・



「‥っ!」

「あ!ほら名前!山本手ふってるよ!」

「‥」

「ダメだよ花、名前ちゃんビックリしすぎて固まっちゃってる」

「あーもー!この子は‥!!」



それだけで、幸せ。