(※5万ヒット『ツンデレ』のボツネタ)

「はい、どうぞ」

「あ、どうも‥」




目の前に置かれたコーヒーに名前が軽く頭を下げてお礼を言う。どうして自分がここに呼び出されたのかは分からないが、目の前にいる風紀委員長はどうやら彼女に危害を加えるつもりはまったく無いらしい。

黙ってコーヒーを啜る雲雀に、名前もカップを手に取ると静かに口を付けた。




「いきなり呼び出したりしてごめんね」

「いえ、別に‥」

「あの男のことなんだけど」

「あの男?」

「ん?‥ああ、ディーノのこと」

「ぶっ!‥‥けほっ‥」

「‥大丈夫?」




突然出された名前に動揺したのか軽くむせてしまった名前に雲雀は持っていた黒のハンカチを差し出したが、名前はやんわり雲雀に断るとブレザーの中に入っていたハンカチを取り出し自分の口元を押さえた。




「な、なんで‥あなたが‥っ!」

「何で、って君の恋人は一応僕の家庭教師だし」




家庭教師、確かにこの学校のとある生徒の家庭教師をやっていると本人から聞いていたが、まさか目の前の男だったとは。名前はてっきり彼が親しい沢田達の中の誰かだろうと思っていた。




「ちょ、ちょっと待ってください‥」

「何?」

「なんで、こ、恋人って‥知って‥だって私、内緒って約束して‥っ」

「会うたびに君の話しばかりして、あれだけ惚気られたらね」




「普通気付くと思うけど」と言いながら再びコーヒーを啜る雲雀に名前はきゅうと唇を噛み締めた。約束を破られたことに対しての怒りや苛立ちもあるが、それよりも恥ずかしいという気持ちが半分以上を占めた。

自分がいないところでどんなことを言っていたのか、惚気とは一体どんな内容なのか。分からないからこそ恥ずかしかった。




「最悪‥!」

「どうして?」

「どうして、ってそんなの‥!」

「恋人なのは事実なんでしょ?」

「そ、そうですけど‥」

「最悪、っていうのは恥ずかしいから?それともあの人に対する嫌悪から?」

「恥ずかしいからです!」

「だったら別にいいんじゃない?」

「え?」

「いつかはばれることだし、それに君は好きなんでしょ?あの男のことが」

「ま、まあ‥嫌いじゃないですし‥‥むしろ、その‥好き、ですけど‥」


「だって。よかったね」

「‥‥‥え?」

「名前ー!!」

「きゃ!?え、な、ディーノっ!?」




突然後ろから抱きしめられ何事かと顔を上げれば、そこには名前のことをしっかり抱きしめ離れようとしない金髪の馬の姿。

聞かれていた。いや、ここに呼び出された時点ではめられていた。そう一瞬で理解すると名前は目の前の風紀委員を睨んだ。が、当の本人はそんな視線を気に留めることなく、そっぽを向いてコーヒーを啜っている。




「恭弥ー!名前が俺のこと好きって言ってくれたー!」

「うん、聞いてたよ。言わせたの僕だし」

「今度ハンバーグ奢ってやるからな!」

「楽しみにしてるよ」

「ちょっと!私別に‥す、好きなんて言ってない!」

「言ってた!」

「言ってたよ」

「‥ッ‥!」







(自分でも分かるくらい)
(顔が熱いの)




名前、俺が嫌い‥か?

う‥っ!‥き、好きじゃない、かも、しれなくもないかもしれない‥かも‥

ねえそれどっち?はっきりしなよ

名前どっち?

っ‥好き!これで満足!?

ああ、満足だぜ!



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ディーノ夢なのに雲雀ばっかりになってしまいボツにしました…^^;
それにしてもディーノがアホの子すぎる…!
20100608