「雲雀さん」
「なに?」
学校のみんなから恐いって言われてる雲雀さん。でも私はそんなに恐い人じゃないと思う。今も少しだけ不機嫌そうな顔してるし眉間の皺はすごく深いけれど、何でかな?そんなに恐いと感じない。恋人だから?うーん、でも私は最初から雲雀さんの事怖いと思っていなかったし。
そうだ、不機嫌な顔をしても雲雀さんである事に変わりはないから。どんな表情でも目が合えばふわっと胸が弾んでしまうんだ。今この瞬間もそうであるように。
「ふふっ、私は雲雀さんのこと好きです」
「…」
「大好きなんです」
何だかとても幸せで、つい笑いながら私が言うと雲雀さんは「また始まった」とでも言いたげに大きく溜息をついて見せた。
「名前は恥ずかしくないの?」
「何がですか?」
「そんなことを気軽に」
頬杖ついて私を見る雲雀さん。やっぱり絵になるなあ、うんうん。なんて思いながら雲雀さんを見ていたせいか、顔がにやけてしまい雲雀さんの目がさっきよりも少しだけ厳しくなる。どんな顔も好きだけど睨まれるのは怖いなあ、なんて思ったり。
「毎日毎日、飽きもせず好きとか言って」
「毎日言われてるんだからいい加減慣れましょう?」
「やだよ、そんな慣れ」
「それに私、好きって言葉は雲雀さん以外に使いませんよ」
恥ずかしいから言わない、よりも。大好きな人には好きって感じたときにちゃんと伝えたほうがきっと幸せです!と勢いよく言えば雲雀さんは少しだけ目を開いて驚く。
驚いた顔、珍しいな、私変なこと言ったかな?でもその顔を見れて嬉しいな、なんて笑いながら考えていたら、突然ガタンと椅子から立ち上がった雲雀さん。
「…帰るよ」
「え?」
告げられた言葉に今度は私が驚いて時計を見る。いつも帰る時間よりも今日は随分と早い。
どうして?と聞くよりも早く荷物のない雲雀さんはスタスタと歩き応接室のドアノブに手を掛けた。
「ま、待ってください…!」
「君が遅いんでしょ」
そっぽを向いたままそう言うのに私が荷物をまとめるまで出て行かず、待っていてくれるのは雲雀さんが優しい人だからだと知ってる。
荷物をまとめながら、ふと、考える。目を合わせてくれない雲雀さん、突然帰ると言い出した雲雀さん。好きだと何度も何度も伝えた私。今日、自分がした事と 色々な表情の彼が重なって、一つ答えが出る。
「雲雀さん、もしかして」
「何、早くしてよ。いい加減置いて行くよ」
「照れてますか?」
何の気なしに聞いてみれば、ばっと顔を上げる雲雀さん。顔を見て、目が合って、私は自分の口元が緩むのが止められない。初めて見た、初めて見せてくれた、雲雀さんの照れた顔は
やっぱり赤くて
(もっと見せて) (色んなあなた)
私、いますっごく幸せです!
にやけた顔のままそう言えば「うるさい」と一蹴されてしまうけれど。でもその頬の熱は引かないから、私の顔は余計に緩んだ。
−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−− 照れ屋な委員長
2007・12・XX 2015.10.17 修正
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