楽しいの。二人でどうでもいい話しをしたり、くだらないことで笑いあったり。そういう関係が楽しいの。

男女の友情なんてありえない、って言う人もいるけど、こういうのが男女の友情ってなんだなー、って思う。


「野球の試合を見に来いよー」って笑う山本に私も、仕方ないから見に行ってあげるー、なんて笑って答えて。

周りも「あの二人はそういう関係だから」って言ってる。私たちの会話や行動を見て、みんなおかしそうに笑って。そうやって過ごす毎日が楽しくて、私は今の時間を壊したくないんだよ。




「おい、話し聞けって‥!」

「‥っ」




聞きたくない、って言うように背を向けて早足で歩く私を、後ろから追いかける山本。


放課後、私に話したいことがあるって言った山本に、私はもちろん二つ返事で快く承諾した。きっと宿題手伝って、とかそんなことだろうなって考えてたのに。



『あの、さ‥俺ずっとお前のこと‥』



どこか必死な表情。頬が赤いのは夕日のせいか。言おうか言わないか悩み、視線を彷徨わせてから、山本はしっかりと私を見た。

ドクリ、心臓の嫌な音が聞こえる。聞いちゃいけない。彼がこれから言うであろう言葉を聞いてしまったら、もう戻れなくなってしまう。


気付いたら背を向けて教室を飛び出していた。

山本の私を見る目が、いつもと違う。そんな目、私は知らないよ。

そんな、誰かを恋うような眼差し私は知らないよ。



「おい、名前‥!」

「‥っ!」



肩を掴まれる。身体ごと山本に向きなおされるけど、顔が上げられない、見れない。



「話しぐらい、聞けよ‥っ!」

「‥、」

「俺は、ずっと」

「、‥っ‥ない!」



彼の言葉を遮り、睨むように見上げると、山本は眉間に皺を寄せて辛そうな表情をしている。私も今の彼と同じ表情をしているかもしれない。



「聞かない‥!」

「‥っ」

「絶対‥っ」






(壊したくないんだよ)
(君とは笑っていたいんだよ)



笑っていたいから、だから。

この関係が変わってしまうことが、すごく怖いんだよ。


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『友達以上恋人未満』拍手ログ
20091209