「名前‥?」
ぺちぺちと優しく頬を叩かれる感覚に、うっすらと目を開けようとするが、ふわふわと気持ちのいい睡魔に目を開けきることが出来ず、目を開けては閉じる、開けては閉じるを繰り返す。
「大丈夫か?」
「‥ん、」
睡魔に引き込まれそうな意識の中で小さく頷けば小さく笑う武の声。座らずに二人で寄りかかったソファの柔らかさが、起きようと頑張る私の眠気を誘う。
「眠い?」
「だい、じょぶ‥」
「まだ少しだけ時間あるから寝ても起こしてやるけど」
「へーき‥っ」
そう言って徐々に落ちてくる瞼を誤魔化すようにゴシゴシと擦っているとポン、と頭に武の手の感覚。あー、だめ。そんなことされたらまた眠ってしまいそう‥。
武の暖かい手に再び意識を引っ張られるが、何とか意識を繋ぎとめた。
「新年、たけしと迎えたいから‥頑張るのっ」
「そっか。でも名前の目、眠そうだぜ?」
チュ、と笑いを含んだ声と共に瞼に感じたのは武の唇。
なんだか恥ずかしくなって、へーきだもんっ、と呟き身を捩ったら、腕枕のように回された武の腕に頭を固定されてしまう。
「‥む、」
「ほら、逃げんなって」
「は、恥ずかしいの‥っ」
「二人なのに?」
「う、」
確かに誰もいないけど。そうなんだけど!眉間に皺を寄せれば、今度は眉間に暖かい感触。頬に、こめかみに、と次々くる感触に先程まで感じていた眠気など吹っ飛んでしまった。
「せ、せくはら‥っ」
「違うって」
「へん、たい‥っ」
「こら」
「だって‥っ」
笑って呟く武に抗議の声を上げようとすれば、言葉になる前に武に唇を塞がれてしまう。あああ‥。
そして、なかなか離れてくれない武に必死に両手で抵抗してみるが抵抗むなしく、もう片方の武の腕が私の身体へと回される。あああああ‥!
「今年のぶん、ぜんぶ味わっておこうかと思って」
「なに、言って‥っ」
ようやく離れてくれたかと思えば間近でそんなことを言う武に顔は一気に熱くなる。
「真っ赤」
「ち、違う‥っ」
「はいはい」
ポンポン、と再び頭を撫でられる感覚にむぅ、とすると同時に暖かくて心地いい武の手。こうやって撫でてくれるの好きだな、と思ってしまう自分が恥ずかしくて武の胸に顔をうずめる。
「そろそろ時間だから寝るなよー?」
「寝ないもん‥っ」
「寝たらまた同じことするからな」
「絶対、寝ないっ」
そういうと武が笑うのが埋めた胸に小さく響く。それが悔しくて頭をグリグリと胸に押し付ける。いてーって、と笑う武の声がどこか心地いい。
「たけし‥」
「ん?」
「来年もよろしくね?」
「おう、こちらこそ」
こうやって一緒に、再来年もその先も武とずっと一緒にいたいな。
「名前、」
「ん‥?」
「大好き」
再び塞がれた唇。今度は抵抗せずに受け入れた。
ずっとずっと
(二人でいたいな) (恥ずかしいから言わないけど)
「た、たけしは‥長い、のっ」
「そうかー?」
結局なかなか開放してくれない武に精一杯の抵抗で離れることになった私。もっと抗議したいのに息が上がって上手く言葉にできない。
「あのね‥っ」
ピピッ
言いかけて鳴ったのは私の携帯のタイマー。年明けピッタリにセットしておいたのをすっかり忘れていた。もう年を越えてしまったなんて。もうちょっと静かにすごしたかったのにな。
そんなことを思いながら手を伸ばして携帯のタイマーを止めると、重ねるように私の手を掴んだ武の手。
「・・な、なに?」
「年も明けたし、今年のぶんも早速味わおうかと」
ニコニコと告げる武に背筋が凍っていくと同時に掴まれた手を引かれ、三度唇を塞がれた。
−−−−−−−−−−−− ドン引きする甘さと共に、 早いですがおめでとうございます。← 2008.12.31
|