あなたはとっても優しい人だから。
いつも色々葛藤してるよね。知ってるよ。綱吉君の右腕でいることに誇りを持ってること。だけど、同時にそれ以上のプレッシャーや責任を感じているの。私は知ってるよ。
同じ守護者の人や部下の人が怪我をすると、あなたは真っ先にその人の所に向かうよね。「だらしねえ」とか「十代目に迷惑かけるな」とか、言葉はすごく冷たいけど。本当はすごく心配してたんだよね。だから真っ先に駆けつけるんだよね。
「さっさと治しやがれ」
なんて。
「お前が不甲斐ねえから次の任務には俺も行く」
なんて。
あなたはすごく優しいよね。心配なんだよね。その遠回しな優しさ周りは気付いてるよ。きっと言ったらあなたはすごく照れて否定して、いつものように行動できなくなってしまうだろうから、誰も何も言わないけど。ちゃんとみんなわかってるよ。
あなたが敬愛する綱吉君だって、あなたのそういう所が好きなんだ、って私に笑って話してくれたよ。
あまり言葉にはしないけど、綱吉君が、仲間が、ボンゴレが大好きなんだよね。あなたのそういう気持ち、私や綱吉君だけじゃなくて、山本君も雲雀さんも六道さんだってちゃんと分かってるよ。
でも、あなたは時々どこか不安そうな顔をするよね。
「名前‥」
「なに?」
また、不安そうな顔。でも私、ちゃんとその理由知ってるんだ。
「今度の、その‥約束なんだけどよ‥」
「うん」
あなたはボンゴレが大切だから。仲間のことが大事だから。
「‥その、仕事が入っちまって‥さ‥」
「私とは出かけられなくなっちゃった?」
「‥‥悪い」
いつも忙しくて、自然と、私と過ごす時間が減ってしまうんだよね。そのことが心配なんだよね。私を悲しませてないか、寂しがらせてないか、不安で。だからそんな表情をするんだよね。
あなたはいつも周りの心配ばかりしてるね。私の心配ばかりしているね。
あなたは、あなたは、本当に。
「隼人は本当にお馬鹿さんだなあ」
「は?」
「大丈夫って、私いつも言ってるでしょ?」
「でもよ、この前の約束も‥」
「それも大丈夫って言ったよ?」
言葉を遮るように言うと隼人は少しだけ難しい顔をして見せた。だから私は少し笑みを浮かべる。
「私は、あなたが好きで、あなたのそういう所が好きなんだよ。ボンゴレのために、誰かのために本当に優しくなれる、そういう隼人が好きなの。だから一緒にいるの。だから大丈夫なの」
「‥お前って、マジで変な奴」
苦笑いみたいに笑う。だけど表情は今までよりずっと明るいね。だから私も嬉しくなって、さっきよりも笑みを深める。
「私のこういう所、理解してって何年も前から言ってるでしょ?」
私はあなたが気付いていない様な、例えるなら骨の奥や、細胞までだって理解してるんだから。
理解 (私はあなたを理解した上で) (あなたのことが好きなんだから)
大丈夫だよ、そんなに心配しなくても自分で限界だと思ったら、ちゃんと言うから。でもその時、もしも隼人が私を放り出したら‥
そこまで言ってにっこり笑って見せた。
別にふざけて言ったことで本気じゃない。私以上に大事なことがあるならそっちを優先してくれて構わないんだけど。
珍しく焦った顔をする彼を見て、なんだかんだ私は彼にとって大事な存在であるみたいで。それがとっても嬉しかった。
−−−−−−−−−−−−−−−−−− 彼という個人が好き。 不器用でも上辺じゃない優しさを持つ人が好き。 そんな二つを併せ持つ彼が大好き。 だから放置されても余所見なんかしませんよ。
そんな女の子の話。 20120331
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