「気持ちは分かるし、俺だって名前ちゃんが上手くいけばいいなって思ってたよ」
「う、うん・・」
「後押ししたのは俺だったし」
「そ、だね・・」
「だけど後押しした次の日にいきなり無断欠席されると俺が心配になるでしょー!」
「え、あ、はい・・ごめ」
「ごめんじゃない!」
「ま、まだ言ってない・・!」
「まったく」と目の前で怒るルシオくんに私は、あはは・・と乾いた笑みを浮かべて見せるが、普段は優しいルシオくんにギッと睨まれてしまい私は表情を引き攣らせた。
「学校来ないしお店にだって来てないし・・!」
「それは、ね・・!」
「マスターに聞いても笑って誤魔化されるし!」
今日は登校した瞬間にルシオくんに捕まってしまい何かと思えば、無断欠席したことをなんだかとても心配させてしまったらしい。長々ずっとお説教というか、私の親のように怒るルシオくん。
そういう友人がいることは嬉しくて、怒っているルシオくんを前に私は笑みを浮かべてしまった。
するとそんな私を見てルシオくんはどこか諦めたように大きく溜息をつくと眉を下げていつもの穏やかな笑顔を見せた。
「それで?」
「うん?」
「上手く、いったんだよ・・ね?」
恐る恐る、遠慮がちに聞いてくるルシオくん。きっともしものことを考えてるからこそ、この聞き方なんだろうな。
「うん、もう大丈夫だよ」
「そっか、よかったね」
「ありがとう、ルシオくんのお陰だよ」
「え、いや、そうかな?」
「他にもたくさんの人たちに支えてもらったけど、答えをくれたのはルシオくんだから」
『ただ、会いたいよ』そのストレートな言葉は理由を並べるよりも簡単で、私の中にある一番の気持ちと直結した言葉だった。きっと私はその言葉が無かったら間違った答えを出していたかもしれない。そう思うとお礼を言わずにはいられなかった。
「・・でも、やっぱりさ・・一番頑張ったのは名前ちゃんだよ」
「え?」
「俺は自分の意見として言っただけだし、それを言葉のままに実行したのは君でしょ?」
「そう言ってもらえると嬉しいな・・でも、」
「でも?」
「私あの時ルシオくんにはあくまで“参考意見”を聞いただけだったのにね、ふふ」
「あはは、かもね。でも終わり良ければ全て良し、だよ」
「あ、日本の言葉?」
「うん、ちょっと勉強してみた」
ふにゃり、と笑うルシオくんに私も釣られてふにゃりと笑みを浮かべる。
少し前とは違う穏やかな時間、落ち着いた心。今日も学校が終わったら急いでお店に行こう。彼が来てくれるかも知れない。・・あー、だけどお仕事溜まってるって言ってたからどうかな、なんて同時に思う。
「名前ちゃん今日は終わったら一番にお店?」
「うん、もちろん」
もし彼が今日は来なかったとしても、今までみたいに沈んだり、落ち込んだりすることはない。
次の約束を交わしたから。だから私はいつものように仕事をして、たまに窓の外に視線を送ってみたりしながら・・そうやって綱吉さんのことを待つことができる。
同じだといい
(考えではなく) (感じている空気が)
「なんか俺も会いたくなってきちゃったな・・」
「あ、彼女さんに?」
「うん、だって名前ちゃん幸せそうなんだもん」
「羨ましい」と笑うルシオくんに私は少しの照れを感じつつも、きっと彼女さんもルシオくんと同じことを思ってるよ、と呟いた。
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