「待てエルヴィン」



咄嗟にリヴァイ兵長がそう言ってくれたお陰で、鉢合わせることは免れたものの。逃げ場が無いのには変わらない。

残念なことに平然と顔を合わせられる度胸はない。しかも元上司のリヴァイ兵長の所に来ていたなんて、相談内容なんてばれてしまう。



「おい、どうするんだ。いつまでも足止め出来ねえぞ」

「どうしましょう…」



内心はすごく焦っているし、戸惑っている。けれどそれが表面にあまり出ていないのか眉間にシワを寄せて「焦ってんのか?」と面倒臭そうな顔をする兵長。



「隠れる所、ありますか…?」

「あるには、あるが」

「では、かくまってください」

「アイツに引き抜かれたお前をか?」

「また、そうやって…」


「リヴァイ、どうした?まだか?」


「!…仕方ありません、今度何かお礼します…」

「そういや内地に質のいい茶葉を扱う店が出来たらしい」

「分かりました、今度一緒に行きましょう…」

「よし交渉成立だ」



そう言うと、デスクから少し椅子を離したリヴァイ兵長。

どういうことです?と私が首を傾げていると呆れたように溜息をついた。



「入れ」

「机の下、ですか…?」

「ここしかねえ」

「ですが、」

「嫌なら鉢合わせるだけだ」

「…」



他に隠れる場所なんてない。

あるのはこのリヴァイ兵長用の大きいデスクだけ。足元に入れば身を隠すことは出来るが。けれど。なんだかとてもはしたない事をしているような。そんな羞恥心がある。私にだってそういう気持ちくらいある。



「おい早くしろ」

「…っ」



どうしようもない。

小さな声で「失礼します」と言うとほんの少しリヴァイ兵長の笑う声が聞こえた。

私が入った事を確認して、リヴァイ兵長が椅子を引く。ぐっと近くなるのはリヴァイ兵長の両足。私の身体を両足で挟むように置かれ、反射的に私の顔に熱が灯る。



「ち、近いです…」

「我慢しろ。それとそこから顔を覗かせるな。変な感覚になる」

「なっ…!」



からかわれているのが分かり、出来る限り身を引き兵長の下半身と距離をとろうとした時。



「おい、ナマエよ」

「はい?」



呼ばれ、再び顔を出すとものすごく意地の悪い顔で笑みを浮かべるリヴァイ兵長と目が合った。



「変な所に触るなよ」

「っ!」



触りません!

と否定をする前にリヴァイ兵長が「いいぞ、エルヴィン」と外に声を掛けてしまったので、私の訴えは言葉に出来ぬまま。

どうしようもなく広がる羞恥心を、リヴァイ兵長の内腿を軽く叩くことで解消させた。