「最初はグランドマーレとボンゴレ十世の二人だけでの対談になりますので、人魚様はお声が掛かるまで待機していてください」




どこかほっぽりだされてしまったような、そんな疎外感を感じたけど、ボス同士が二人だけで話すと言うことが大事なことだと分かっていた。

オトラントには了解の返事をしたものの、私にはこれと言ってやることがない。もうボンゴレ様は来ているのかな?お父さんとお話しの真っ最中?それともまだ来てない?

ふう、と小さく息を吐きながら視線を窓の外へと向けた。


私の部屋からはすぐ外にある庭園が見える。手入れの行き届いた庭園は綺麗で、オトラントや他のみんなを誘ってお茶会を開いたりしたこともある。

オトラントが言うには最初は雑草だらけだった庭を、私のお母さんの提案で綺麗にすることになったらしい。もちろん手伝いとしてオトラントや他のみんなも借り出されたらしいけれど‥。



「‥よし、」



やっぱりこうやって一人でぼんやりしてるのもつまらない。お庭に出て綺麗な空気をいっぱい吸うことにしよう。別に「部屋にいてくれ」って言われたわけじゃないし、それにきっとオトラントなら見つけてくれる、はず‥。

根拠はないけれど一人納得すると部屋を後にした。






「んー、いい天気っ」



軽く両手を伸ばし大きく深呼吸をする。暑すぎず寒すぎず、穏やかな風がワンピースの裾を軽く揺らした。

きっちりと揃えられた芝生。花壇に飾られた色鮮やかな季節の花。お父さんはお母さんが亡くなった時から一度たりともこの庭の手入れを怠ったことは無い。専属の庭師を呼んで、季節に合わせた花や苗木を植えさせている。

お父さんからすればこの庭はお母さんとの思い出が詰まっている場所だから。お母さんの面影を消さないようにしているのかもしれない。



「‥あ、」



ざあ、と強く吹いた風が花壇に咲いていた花弁を散らした。

赤やピンク。黄色や白といった鮮やかな花びらが私の方へと吹き付けられる。頭上に舞い上がった花びらは太陽の光に照らされながら、ゆっくりと私へ降り注ぐ。

一枚、花びらに触れようと手を伸ばしてみるが、まるで逃げるように風にさらわれてしまう。

なら今度は反対側の花びらへ。くるりと身体を回転させるとワンピースが私の動きに合わせてふんわりと広がる。

花に踊らされてるような感覚がなんだか可笑しくて一人笑った。


まるで今はもういないお母さんにからかわれているような、そんな気分だった。



「っ‥わ、」



子供のように遊びすぎたのだろうか、自分の足に躓き身体が傾く。見えていた景色がグラリと傾く。

ぎゅ、と目を閉じ身体を強張らせた。



(ひらり花弁が舞い上がる)