カチャカチャ、と食器が音を立てる。

こんな風に顔を合わせて夕食をとるのはいつぶりだろう。チラリと伺い見れば、彼はただ静かに料理に手をつけてくれていた。

ハンジ分隊長と話しをしてからそろそろ一週間になる。私は確かめようと決意したものの、一向に行動へ移すことが出来ないまま。

その間、彼が深夜に部屋を出て行くことは数回あった。私が寝ていて確認できない日もあったけれど。現状維持の状態が続いていた。


‥ううん、このままじゃダメ。

ちゃんと確認してすっきりさせないと私はいつまでも引きずってしまうから。‥けれど、久しぶりに二人きりでとれる夕食に心が弾んでしまい、彼に何か変化があったんじゃないか、と期待してしまう。

私が確認しなくても、もう‥‥ううん、だからダメ!なにもしないで待ってばかりはダメなのに!



「おい、どうした?」

「え」



びく、と顔を上げれば何とも不思議そうな顔をしたリヴァイと目が合った。

声をかけてもらえた、なんて少女染みた喜びを噛み締める前に、なんて誤魔化そうか、と頭をフル回転させる。



「あの、その‥‥お、美味しいかなって思って‥!」



実は今日はいつもと少し違う香草を使って、初めて使うものだから香りとか嫌じゃないかなって心配で‥!

わたわた誤魔化すように口を開けば思いのほか饒舌になってしまって、自分で自分に少し驚いた。それはリヴァイも一緒だったのか、少し驚いた表情を浮かべたものの、すぐに戻り目元に優しげな色をつけてくれた。



「いや、問題ねえな」

「ほ、ほんとに‥?」

「ああ、お前の作る物をまずいと思ったことは一度もねえ」



トクン、と心臓が大きく音を立てる。熱くなる頬、言葉を失う思考。

一緒に取れない食事はほぼ翌日の朝食に回されていて私は彼よりも起きるのが遅いから、いつもそれを食べる姿を見ることは出来なかった。けれど、彼は食べていてくれた。

ちゃんと、口にしてくれてたんだ。

ふにゃり、と緩む頬には力が入らず。だらしなく緩んだ顔。



「えへへ、嬉しい」



そう言って笑う私にリヴァイは表情を歪めぬまま。それどころか珍しく口元に僅かに笑みを浮かべ、残すことなく夕飯を全て完食してくれた。

とても幸せだった。食べ終わった後も食器を洗おうとしたら彼が「たまには俺が洗おう、ナマエは休んでろ」なんて言ってくれて。結局私は黙々と食器を洗う彼の横に立っていたんだけれど。

一秒一秒がとても幸せだった。




深夜、彼がこの部屋を出て行くその瞬間までは。