『恋次さん、しっかりして下さい!』


フワフワとどこか頼りない泡が傷を包む。これが自分の出来る精一杯かと思うと、悔しくてつい唇を噛み締めた。

始まりは、旅禍の侵入だった。
旅禍と戦いで敗れることはあるかもしれないと思っていたけど…。

あれ…?今まで気がつかなかったが、恋次さんの近くに落ちていたあれは。


『朽木、隊長の……?』


そっと拾う。間違いない、朽木隊長の物だ。朽木隊長の物が落ちている、ということはもしかして恋次さんと戦ったのは…。

確かに、恋次さんの体には至る所に深い切り傷。千本桜ならこの様な傷を付けるのは可能。でも、どうして…。

っとにかく、今は傷の治療が先だ。あと一人、四番隊の人がいてくれればもっと早く治すことが出来るのに…。

無い物ねだりをしても仕方ない。刀を握り締め、自分の精一杯の霊圧を込めた。



何分ぐらいたっただろうか。今にも霊圧は底を尽きそうなのでは無いかと思うくらいにふらつく。
傷はもうほとんど塞がっているが、やはり完全ではない。

誰かお願い、四番隊の人を呼んできて……っ。
すると後ろからガサガサという音。


「あれ、咲那?ってれ、恋次さん!?」


聞き慣れた声に安心したのか、ぐらりと倒れ、視界がシャットアウトした。

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