NARUTO 0908
ぼーっと木の上からサスケ達が住んでいるであろう方角を見る。多分、今日がイタチさんの里抜け日。昼間に会ったときの雰囲気がいつもと違ったし、まあ勘なんだけどさ。
……やだな。原作を変える行動を起こすほど勇気は無いし、これは私がどう頑張っても変わらなかっただろう。イタチさんは変なところで頑固だし、子供っぽいし、でも、優し過ぎる。
ガサッ。振り向くと……え、なんで、イタチさんが…?
『…どう、したんですか?』
イタチさんは少し困った顔で私に手を伸ばしかけたが、はっとした表情になり手を引っ込めた。血の匂いがする。…もう引き返せない、か。
何も知らないような顔でへらりと笑う。どうしたんですか、なんて言って。
「……俺は、里を抜ける」
『………そう、ですか』
決意の光を灯した目でじっと見つめられては何も言えやしない。でも、この人はなんて泣きそうに顔をしてるんだ。
決意の中に悲哀を混ぜ、苦々しく歪めた顔にはサスケ君が関係しているのだろう。
「ユナ、頼みがあるんだ」
『…なんですか?』
「……サスケを、頼む」
『っ当たり前じゃ、ないですか……』
「…ありがとう」
やっと、笑ってくれた。いつもの優しい笑顔。その笑顔を見て、不覚にも泣きそうになった。立ち去ろうとするイタチさんへ向けて、また会えるようにと意を込めて言った。
『待ってます!サスケ君と一緒に……』
驚いた様子だったが、……ああ、と酷く穏やかな笑顔で言った。そして、イタチさんは去っていった。涙は出なかった。
自分は何がしたかったのだろう。イタチさんを止めるわけでも無く、うちはを守るわけでも無く。…いや、今はサスケ君を迎えに行かなければ、考えるのはまた、明日。