コラボ | ナノ
※注意!この作品には猟奇的表現等が含まれます。
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「件の本丸への侵入成功。
 各自、手順に従い刀剣男士たちを侵入させよ。」
無線で夢乙女が簡潔に告げれば、彼女の隣でマップを起動させていた歌仙の手元にいくつものマーカーが現れる。
「やっぱり侵入妨害の結界でも貼られているようだね、見事にバラバラだ。」
「やはり審神者本人は立体映像としてのワープで正解だったようだな。
 猪の狩りと同じだ、最後尾を撃ったところで犠牲は一頭だが先頭を撃てば一網打尽。
 政府の指示書が漏洩しているぞ、これは。」
「てことは、裏切り者がいるわけか。
 嗚呼、面倒だ。」
「全くだ。
 さて、それでは諸君、」
侵略を始めようか。


戸を開け放った先。
怯える五虎退にのし掛かる男が乱を見上げた。
男が何かを発する前に乱は男の顔面を蹴り上げる。
肉弾戦では確かに打刀や太刀には劣るけれど、乱だってカポエイラの使い手だ。
その強烈な蹴りが、男の体を吹き飛ばし、同時に顎を砕く。
受け身も取れぬままにべしゃりと転がった男を手早く結束バンドで縛り上げ、
未だ何が起こったのかわからないという表情の五虎退をそっと抱きしめる。
「来るのが遅くなっちゃって、本当にごめんね。
 でも、もう大丈夫だよ。」
ふるふると震える体にそう告げて、見つからないようにと押入れの中へと隠す。
「すぐ戻って来るから。絶対にここから出ないで。」
こくこく頷く彼を置いて、乱は次の部屋へと駆け出した。


胸糞わりぃな、と同田貫は呟いた。
三日月に嬌声を上げながら跨っていた女の両腕を一閃の元で切り落としながら。
突然のことに驚く三日月と、腕の欠損に悲鳴を上げる女。
それをさらに殴って気絶させ、ぶしゅぶしゅと血の止まらぬ女の体を荷物のように蹴飛ばして、その結合を断ち切ってやる。
「じいさん、この部屋、隠れられる場所は?」
未だぽかんとこちらを見上げている三日月に問えば、震える指先が、同田貫の背後、押入れを指差す。
「じゃあ、あんたはそこに隠れてろ。
 全部終わったら迎えにきてやる。」
それだけ言い置いて。
同田貫は次の部屋へと向かう。
「『うっかり』両腕切り落としちまったが、『まだ』生きてっから平気だよな。
 出血多量で死んじまってようが、それは俺の責任じゃねえし。」


「一人相手によってたかって、とは雅じゃないねえ、この下郎ども。」
裸の男たちの胸に、パッと赤い花が咲いた、とぼおっと天井を見ていた清光は思った。
胸をつき通るのは、鈍い輝き。
本当なら、自分も持っていたはずの、煌めき。
ゆっくりとした動作で肉塊から引き抜かれた銀色は、自然な動作のままに別の男の足を切り落とす。
そうして最後の一人は、すっかり腰を抜かしていたその男は、首にぎちりと白い指が絡まる。
「ぐ、う、」
「嗚呼、腹が立つ。
 貴様ら如きが僕たち末席とはいえ神の座につくものたちを好き放題しているなんて、」
だらりと、もがいていた男の手が垂れる。
その醜い裸体を、彼、歌仙兼定は興味を失ったかのようにあっさり手放して、ぼとん、と体が床へと落ちる。
「こ、殺した、の・・・?」
散々に鳴かされて、すっかりかすれてしまった喉で問えば、いいや、と帰って来る。
「そいつは首の血管を圧迫して失神させただけだ。
 そっちは急所を外してはやったけどさっさと手当てしないと死ぬだろうね。
 足はどうだろう。
 大腿部、太ももの動脈を切ってやったから生きるか死ぬかが五分五分じゃないか?」
まあ、一人は確保したからあとは死のうがどうなろうがどうでもいいのだけれど。
歌仙はそう嘯くと、床に脱ぎ捨てられていた誰かの上着を清光の肩にふわりとかける。
「しばらくやかましくなるだろうけど、押入れから絶対に出ないようにね。
 それが終わったら、迎えにきてあげるから。」


「醜いな。」
ギチギチギチ、と夢乙女の手により気道が圧迫され、ぐぅ、と女は呻く。
呻いて、手足をめちゃくちゃにバタつかせ、爪で夢乙女の手を引っ掻くが、白手袋と軍服に包まれた手に傷をつけることはできない。
部屋は、赤かった。
そこかしこに赤色が飛び散り、畳を、ふすまを、行灯を、布団を壁を、紅蓮に染め上げている。
その部屋の中心でぼうっと表情の抜け落ちた顔で夢乙女と、首を締め上げられている女を見上げているのは、鶴丸。
顔中に殴られたと思しき痣があり、半分むき出しになった肩にはタバコの火を押し付けられたと思しき火傷の跡がいくつものぞいている。
ほんの数分前まで、鶴丸にとってここは地獄だった。
見知らぬ男や女が、笑いながら鶴丸を殴り、首を絞め、タバコの火を戯れに押し付けて消していく。
挙句無理やりに性的快感を高められ、心が置き去りになったまま体だけを貪られていたのだ。
しかし。
数分前を境に、鶴丸と男たち女たちの境遇は一瞬で入れ替わった。
黒く撓ったなにかが、鶴丸の体を好き放題弄ぶ男たちの首を刎ねた。
ごとんと転がり、壁に、床に、天井に血を吹き出すその体に女たちが悲鳴をあげる前に、その喉を細い針のようなものが真横に裂き、今度は女たちが沈黙する。
そうしてただ一人残っていた、鶴丸に乗っかり享楽に耽っていた女が真っ黒な装いの女に首を締め上げられているのだ。
「なあ、」
もがく女の体が、だらりと弛緩する。
同時に、ごきり、と何かを砕くような、潰すような、嫌な音がした。
「アンタは俺の神様かい?」
「いいや。」
鶴丸の『黒い神様』は、どこまでも真っ黒で吸い込まれそうな瞳を鶴丸へと向けた。
「そんなご大層なものではない。
 お前を、お前たちを救いにきたただの人間だ。」
その手で今まさに握りつぶした命をなんのためらいもなく投げ捨てながら、『黒い神様』は鶴丸にそう言った。




「なんじゃ、殺すな言うとったお前が殺すがか。」
背後からの気配に、夢乙女は自嘲気味に嗤う。
「私とてただの人間だ。
 泣きもすれば笑いもする。
 怒りに我を忘れることだってある。」
お前もそうではないのかえ?
豊久殿。
振り返った先。
血まみれの刀を提げた男に、夢乙女は問うた。
「はン、面白か女じゃ。
 男ん格好しちょうだけかと思うたが、中身も男そのもんか。
 お前とこの武者とも殺りおうて見たいが、お前も捨てがたい。」
「私と殺り合いたいと?
 はははは、やはりお前、馬鹿だな。
 それもとびっきりの。
 まあ、いい。」
ニタリと、夢乙女は嗤う。
「五分だ。
 五分。
 それ以上でもそれ以下でもない。
 その時間であれば、相手になってやる。」
告げた瞬間に、豊久は地を蹴り、刀を夢乙女へと突き立てる。
夢乙女は、それを顔の前でクロスさせた腕によって受け止める。
キィィィン、と金属と金属のかち合う音がその場へと響く。
「仕込みか。」
「仕込み、と言うほどでもないがね。
 まあなんぞの時の備えだ。
 チタン合金プレートだが、弾除けにはなる。」
ニタリ。
お互いがお互いに、歯をむき出しにして嗤う。
「よか。
 よか武者じゃ。」
「お褒め頂き、恐悦至極。」
拮抗し合う力が緩み、一旦互いに距離を取ろうとして。
「どうして当然仲間割れしてるのかな、雅じゃないよ全く。」
ゴン、ともドゴォ、ともつかぬ音が響いて。
豊久の目の前に星が散った。
ついで、頭部にじんじんと響く痛みが走る。
「くぅぅぅぅ、」
「痛い、歌仙。」
「任務そっちのけで手合せだか殺し合いだか始めていたからね、ぶん殴らせてもらったよ。」
「気配ば消して近寄るか!!
 ほんのこつお前のとこはバケモンの巣窟じゃの!!」
痛む頭を押さえつつ、豊久は紫の髪を揺らす歌仙を睨みつける。
「躾のなってない犬じゃあるまいし、何にでも喧嘩を売るんじゃないよ、島津の犬っころ。」
「あ゛ぁ゛ん?」
「やめろ、歌仙。
 すまんな、そういうことでこの試合はお預けだ。
 時間があればまた後で相手をしよう。
 では。」
すっかり普段の表情へと戻ってしまった夢乙女に、豊久は一抹のつまらなさを覚えつつ、本来の仕事へと戻っていった。
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