ネタ部屋 | ナノ
「失礼します」

襖を開ければ、学園長と他に数名の教師が僕を待っていた。

「…何かご用で?」
「気が付いておるだろうに」
「この眼について語れと?」

ひやり、とした殺気がその場を包む。

「…うむ」
「…はぁ、あまり気分の良くない話ですよ」

そう言って正座し、周りの教師を見渡す。

「…僕は、既に地図から消えた村の出身です」
「既に地図から…?」
「正しく言えば、地図から意図的に消えた村、ですが」
「何…?」
「その村は医術がどこの村よりも進んでいた。しかし、それは必ずしも良い方法で活用されていたとは限らない」
「と言うと…?」
「人体実験」
「「!!」」
「新しく薬を作っては、村の子供を使い人体実験を行う。死んだらそれっきり、成功すればその子供は城へ連れて行かれ、戦の駒となる」
「な、んだと…!?」
「僕もその人体実験の実験台の1人でしたよ、その証拠がこの眼」

ぽっ、と菖蒲色の炎を灯せば、周りの教師が身構える。

「安心してください、こんな時に攻撃を仕掛ける馬鹿は居ません」
「…それで?君はその眼をどうやって手に入れた?」
「無理やり埋め込まれたんですよ、他所から手に入れたこの六道眼を僕の右目に埋め込み、適応するのかどうか試した。結果はご覧の通り」
「何故逃げ出さなかった?」
「逃げ出せるとでも?逃げ出そうとすれば殺されるのに?」
「っ…」
「それに、僕は他の子供を守るのに必死でしたから。逃げ出す余裕なんてありませんでした」
「親は?その実験に反対してなかったの?」
「反対してるわけないでしょう、僕にこの眼を埋め込んだのは、僕の両親です」
「「!?!!?」」
「だから、この眼を手に入れた僕は手始めに親を殺した。次に隣の子供を殺した大人を殺した。殺して殺して殺して殺して殺して殺して殺して殺して殺して殺して殺して──────────いつの間にか、皆死んでいました」

まぁ、6割作り話なんですがね、と心の中であっかんべーと舌を出す。

「そうして僕は、その村を捨て、他所の村へ移り住んだ。そこでは僕の見目がいいからととても良くしてくれましたよ…この眼を見るまではね」
「…そうして幽閉されていた、のか」
「山田先生、知っていたんですか!?」
「彼を保護したのは、私の息子なんです」
「!!おや驚いた、利吉さんはここに父親が居る事なんて一言も言ってませんでした」
「…わざとだろうな」

はー、と溜息と共にがっくりと肩を落とす山田先生。

「それで?利吉の話によれば、その村は利吉が見た時は正しく地獄絵図だったそうだが」
「じ、地獄絵図…?」
「…彼以外の人は皆死に絶え、子供達は餓死していたそうで」
「ひっ…!!」

くノ一の担任をしている先生が小さく悲鳴をあげる。

「さぁ?洞窟の奥の牢獄に閉じ込められていた僕には何も…ただ、大人の叫び声で「魔が出た」とだけは聞こえましたが」

これも嘘、村人達は僕の幻覚で錯乱して自滅したのだ。

「その後、山田先生の息子さんに保護され、ここに入学した、と」
「えぇ、利吉さんは命の恩人ですからね…その姿に憧れて、ここに入学しました」

これはまぁ、あながち間違いではないんですがね。

「…うむ、よく分かった」
「学園長先生…」
「僕は退学ですか?」
「そうじゃのぅ…」

と、学園長が何か言おうと口を開いた、その時だった。

「「ちょっと待ってください!!」」
「!?な、」

そう叫んで学園長室に雪崩込んできたのは、先程冷たく突き放した筈の皆だった。

「六道君を退学にしないでください!!」
「骸は俺達を守ろうとしてくれたんだ!!」
「学園長先生お願いします!!」
「六道が退学になるなら、勝手な行動を取った俺達だって罰せられる筈だ!!」
「俺達も退学に!!」

「な、何を馬鹿な事を言っているんです!!」
「貴様だけ処分を受けるのは腑に落ちないという事だ!!黙っていろ!!」
「っな…!?」
「はっはっは、仲の良い事だ」

そう朗らかに笑った学園長先生は、ぐるりと私達を見渡し高らかに言い放った。

「今回の騒動の処分は、1週間の謹慎及び学園内の掃除のみとする!!」
「…は、」

───────たった、それだけ??

「が、学園長先生…」
「何か異論はあるかな?」
「…いえ、ありません」

そうして、皆で一礼してから長屋へ向かう。

「…六道」
「は─────」

ドカッ!!という鈍い音と共に頬に強烈な痛みが走る。
数秒遅れてから、立花さんに殴られたのだと、理解した。

「…な、」
「…もそ」

そして立花さんと入れ替わった中在家さんに、脳天に手刀を貰った。

「いっ…!?」
「お前は勝手な事ばかりして!!あれくらいの事で俺達が離れていくとでも思ったのかバカタレ!!」
「潮江さん…」
「癪だが文次郎の言う通りだ、六道。俺達は、友だろう?」
「…食満さん」
「今回は長次に譲ったが、今度同じような事をしてみろ。俺がぶっ飛ばしてやるからな!!」
「七松さん…」
「仙蔵は思いっきり殴り過ぎ!!六道君大丈夫?後で冷やそうね」
「善法寺、さん…」
「でもね、皆、六道君の心配してたんだよ」
「心配…」

あぁ、そう言えばボンゴレに居た時も似たような事があった。
それで綱吉君にこっ酷く怒られて、凪を泣かせてしまったんだっけ。

「…すみません、でした」
「分かればいい!!」
「2度はないぞ」
「…もそ」
「長次も許すってさ!!良かったな骸!!」
「腹が減ったな、食堂に行くか!!」
「ちょっと待って、その前に殴った頬を冷やさなきゃ!!」

ここは、何て温かいのだろう。
ボンゴレと同じ、仲間を思う温かさで溢れている。

「───────Grazie, miei nuovi amici」
「ん?何か言ったか?」
「…いいえ何も、早く頬を冷やして食堂に行きましょう。僕もお腹が空きました」
「今日の定食何だろうね?」
「私は肉がいいな!!」

もうすぐ春がやって来る。
僕達は、2年生に進級するんだ。
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