ネタ部屋 | ナノ

戦で両親を亡くしたというその子がやって来たのは、何の変哲もない村だった。

日に当てれば桔梗色に煌めく髪を持ち、顔立ちも丹精であるその子は酷く村民に好かれ愛されていた。

あの日、その子の左眼に地獄の力が宿るまでは、の話だが。

気味の悪さからか、手のひらを返したように「鬼の子」と罵り、村の奥にある牢へその子を閉じ込めた村民。

それでも、その子は、いつものように、冷たい笑みを浮かべる事をやめなかった。










「これは、酷い」

とある任務帰り、ふとした異臭に気付いたその青年はその原因である場所へ向かい、愕然とした。
何故なら、そこは正しく地獄絵図だったからだ。
死んでかなりの数日が過ぎたのだろう、肉が腐り所々骨が見えている死体が無数も転がっていた。
子供の死体もあり、それはやせ細り骨と皮だけのものや肉が齧られたものまで様々だった。

「────、」
「っ!!」

そんな森の奥から、小さくだが子供の声が。
慌てて向かえば、その声は洞窟から聞こえてきているらしい。

「誰か居るのか!!」
「っ!!だれ、ですか…?」

洞窟の奥、座敷牢と思われる場所には息を呑む程に美しい少年が囚われていた。
何かに怯えているらしいその少年は、突然やって来た青年にも警戒心を向けた。

「私は山田利吉、君はここの村の子供かな?」
「は、はい…あの、村の人は…」
「…」

青年…利吉の表情から何かを察したらしい少年は、俯いて肩を震わせた。

「っ、君さえ良ければ、僕の元へ来ないか」
「え…」
「1人では心細いだろう?」
「いいん、ですか…?」

顔を上げた少年の双眸からはらはらと涙が零れる。
それさえも美しいと思えてしまう程に、何故か利吉は目の前の少年に心を奪われてしまっていた。

「お願い、します…僕は、このまま、ここで死にたくない…!!」

そうとなれば、と牢の扉を壊し、ふらふらと歩く事も覚束無い少年を抱き上げる利吉。
その利吉の胸に顔を埋めた少年は、ひっそりと、誰にも知られないように、氷のように冷たい笑みを浮かべたのだった。










「に、忍術学園に?」
「はい!!僕、利吉さんのような忍者になりたいんです!!」
「し、しかし…」

参ったな、と頭を掻く利吉。
にこにこと笑顔を浮かべる少年…骸から、自分のような忍者になりたい、と言われて悪い気もしなくはないが、忍術学園には、あの人が居るのだ。

「…仕方がない、か」
「利吉、さん?もしかして、迷惑でしたか…?」
「あぁいや、大丈夫」

こうして、忍術学園に入学する事になった骸。
「わぁい、やったぁ!!」と無邪気に喜ぶ骸を、愛おしそうに見つめる利吉。
「僕、お友達と遊んできますね!!」と外へ走って出て、しばらく走って、走って、走って、走って、そして…

「─────クフフ、まさかこんなに上手くいくとは」

子供らしからぬ、大人びた口調でそう言い立ち止まった骸。

「僕が、何の為に、こうしてここに来たのかは知りませんが…」

ふぅ、と息を1つ吐き、そっと空を見上げる。

「…必ず、必ずそちらへ戻ってみせますよ、綱吉君、凪…恭弥君」
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