企画 | ナノ
※2人が結婚した後の話になります。

「七夕デート?」
「はい、お母さんもお父さんと行ってきたらどうですか?私は先輩と夏祭りに出かけますし…」
「そうねぇ…でも、人混みで体調崩したらあの人に悪いし…やめておくわ」
「そう、ですか…」
「ふふふ、マシュちゃんだけでも楽しんでおいで?お土産話楽しみにしてるわ」
「っ、はい!!」

だなんて話をしたのが1週間前。
あの時、ランスロット達は居なかったはずなのに、何故、どうして、私は、浴衣姿なんかに??

「あ、あの、葵…?」
「雁袮似合ってるわ!!」
「そんな…こんなおばさんなのに…それに、顔も…」
「ううん、本当に良く似合ってるわ」
「葵…」
「雁袮、ランスロットさんと出会ってから凄く笑うようになったわ。結婚してからは尚更よ。とても、綺麗」
「っ…」
「大丈夫、自身持って?雁袮は綺麗よ」
「あ、ありがとう、葵…」
「さ!!ランスロットさんの所に行きましょう!!」
「!?それとこれとは別よ!!待って待って!!」

パタパタと葵に手を引かれながら廊下を駆け足で抜け、ランスロットや時臣の待つ部屋へ。

「お待たせ!!見て、雁袮がとても可愛くなったわ!!」
「か、雁袮…!?」
「うん、葵も雁袮も良く似合っているよ」
「あ、ありがとう、時臣…」

反応が怖くて、なかなかランスロットへと顔が向けられない。
と、雁袮へと近付く気配が。
言わずもがなランスロットだ。

「あ、あの、雁袮…」
「う、うん」
「その、とても、似合っています…綺麗、だ」
「っ!!」

ぶわり、と顔が真っ赤になる。
ばっ!!と顔をあげれば、紺色の甚平姿のランスロットの姿が視界に入る。

「ら、ランスロットさん、も、とても似合ってる、わ…その、凄く、格好いい…」
「っーーーーーーー!!」
「初々しいわねぇ」
「あぁ、とても微笑ましいね」

初々しい2人の姿をニヤニヤと見ている時臣と葵。

「も、もう葵!!からかわないで!!」
「ごめんごめん!!さ!行きましょう、夏祭り!!」
「…ごめんね、私はやっぱり行けないわ」
「雁袮…??」
「倒れてしまっては大変だし、皆には迷惑はかけられない…それに、これだけで十分よ!これ以上は贅沢過ぎて罰が当たっちゃう」

寂しそうに笑う雁袮の肩を抱き寄せるランスロット。

「すみませんが、私も行きません」
「ランスロットさん…?」
「雁袮と2人で居ます」
「そう…残念ね」
「仕方が無いさ」
「2人だけでも楽しんできて?」
「あら、誰が夏祭りに行くって言った?」
「「へ?」」
「ふふふ、私達も残るわ。4人で飲みながらお話しましょう?」

そう言ってケラケラと笑う葵の後ろでワインとワイングラスを人数分用意をする時臣。

「雁袮はお酒に弱いから、私と2人でジュースねっ」
「わっ」

雁袮の腕を取り、ソファーに座る葵。

「1杯どうかな、ランスロット君」
「…では、いただきます」
「君にはね、感謝しているんだよ」
「は…?」
「何事にも悲観的だった雁袮が、あんなに前向きになっていて…それに、とても良く笑うようになった」

そう言いながら雁袮を見つめる時臣の目には僅かにだが涙が滲んでいる。

「きっと、君のおかげなんだろうね」
「そんな…私は何も…それに、感謝をするなら私の方です」
「何故?」
「雁袮から聞きました、身分の違う私達の結婚を反対する親族の方々を説得したのは貴方達夫婦なのだと」
「それは…参ったな、内緒だと言ったはずなんだが」
「貴方達が居なければ、私達は夫婦にすらなれていなかった」

そう言って時臣に頭を下げるランスロット。

「ランスロット君!?」
「ありがとうございます…!!」
「頭を上げてくれ。お互い様じゃないか…互いに雁袮の幸せの為に働いた、それだけの事だ」
「…はい」
「もー、2人共何の話してるの?早くしないと花火始まっちゃうわ!」
「花火…?」
「あぁ、ランスロット君は花火は初めてかな?」
「え、えぇ…」
「楽しみにしているといい、とても綺麗だ」

この後、打ち上げられた花火に感動したランスロットの子供のようなはしゃぎようを、3人で微笑ましく見守るのだった。
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