企画 | ナノ
「じゃっじゃーん!!見てよ主!堀川さん可愛くなったと思わない?」
「えっ、あっ、あのっ」

七夕の日、政府開催の夏祭りがあるという事で誰が近侍になるかで揉めに揉めた刀剣男士達。
だが、堀川が放った「…夏祭り、って、キラキラ、してます、ね…行って、みたい、です…」というめちゃくちゃ控えめな一言により、近侍が即決したのは言うまでもない。

「ほ、本当に、僕で、いいんですか…?み、皆さんも、行きたいんじゃ…」
「いいの!堀川さんで!!ほらほら、主も何か言ってあげてよ!!」

グイグイと堀川の背中を押し、紺色の浴衣姿のギルの目の前に立たせる乱。

「ふむ…なかなか似合っているな」
「でっしょー!僕と加州さんがデコったんだから、可愛くなるのは当たり前だよ!!」

ギルに褒められ顔を真っ赤にした堀川は今、浅葱色の浴衣を着ている。

「さて、行くか」
「は、はいっ!!」
「そう固くなるな、それと具合が悪くなったり異変が起きた時はすぐに言うんだぞ」
「わ、分かりました!!」

するり、と堀川の手を握り、門をくぐる。
その先に見えたのは、様々な屋台が並ぶ神社だった。

「わ、わぁ…!!」
「ほぅ…なかなかのラインナップのようだな」
「あ、主…!!あれは何ですか…!!」

キラキラと瞳を輝かせた堀川が指差したのは綿あめの屋台だった。

「綿あめか」
「綿あめ…雲みたいです、ね…」
「食べるか?」
「た、食べれるんですか…!?」
「あぁ、甘くてふわふわだぞ」
「甘くて…ふわふわ…!!」

頬を赤くしてそわそわし始めた堀川を見て笑いを噛み殺し、綿あめの屋台へと足を向ける。

「店主、綿あめを1つ貰おう」
「毎度あり!!」

小判を払い、綿あめを1つ購入する。

「ほれ」
「え、あ、ありがとう、ございます…!!」

綿あめをくるくると回し、どこから食べようか迷っている堀川。
意を決して1口齧る。

「!?!!?く、口の中で溶けてなくなりました…!!」
「美味いか?」
「はい…!!」

ニコニコと満面の笑みで綿あめを食べ進める堀川と、それを見て内心ほっこりするギル。

「あっ、英雄王!!」
「英雄王!こんばんは!!」
「うむ、久しいな」
「あっちに射的あるんですが、英雄王やりません?」
「アーチャーの腕前見たいです!!」

他所の審神者に一斉に囲まれるギル。
その事に驚き、思わず自分の手を握っているギルの手を強く握ってしまう。

「落ち着かんか貴様ら、俺の近侍が驚いている」
「あ、すみません…」
「ごめんね、堀川。びっくりしたよねぇ」

ぐしゃぐしゃと周りの審神者から頭を撫でられ、ぽかんとする堀川。

「射的の屋台に疾く案内せよ」
「あちらです!!」
「堀川、行くぞ」
「あ、はい…!!」

射的の屋台へ向かえば、そこには様々な景品が。

「ほぅ、現世のゲーム機まで置いてあるか」
「兄ちゃんやって行くかい?」
「そうだな…」

小判を支払い、射的用の銃にコルク弾を込める。

「堀川、どれが欲しい」
「えっ?」
「貴様の欲しい物を取ってやる」
「えっ、えっ、あ、じゃあ、あの…白い、犬みたいな、人形が…」
「…何故ここにある、キャスパリーグ人形…」

うんざりとした顔をしながら、1発で仕留めるギル。
その事で周りから歓声が上がる。

「さて、と…後は、乱獲してしまっても、構わんのだろう??」
「へっ?」
「英雄王、それは紅茶のセリフです」
「いいじゃないか、1度言ってみたかったんだもん」

そう言いつつ、確実に仕留めていく。
流石アーチャー、射撃率は正確らしい。

「いやー、取った取った」
「…主、凄いです」

ギルが持っている手提げ袋にはゲーム機やゲームソフトなどが大量に入っている。

「弾1発でゲームソフト2〜3個取った時の店主の顔は本当に愉悦だったな」
「…凄く絶望したような顔でしたね」

苦笑しつつ、残り1口となった綿あめを見つめる。

「…主が食べる分が」
「ん?いや良い、堀川が全て食べよ。俺は甘い物は苦手でな」
「でも…」
「…全く、ほれ」

あー、と口を開けるギル。
きょとんとする堀川。

「見ての通り、右手は景品の袋で、左手は貴様と繋いでいる故に手が空いていない。堀川、貴様が食べさせよ」
「え、えっ!!」

ぶわっと赤くなる堀川。
あわあわと慌てるも、おずおずと綿あめをギルの口元へ持っていく。

「あ…んぅ…やはり甘いな」
「っ…」
「さて、本丸の奴らにも土産を買って帰らねばなるまい」
「そ、そうですね…」

カランコロンと堀川とギルの履いている下駄がなる。
この日は、堀川にとって忘れられない日の1つになった。
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