企画 | ナノ
※時間軸謎

「ぁふ…ん、士乃おはよう」
「爺さんはよ。明けましておめでとう」
「あぁ、うん、おめでとう。今年も気合の入ったおせちだねぇ」
「そりゃ、美味しいもの食べて欲しいからね」
「彼らにかい?」
「そうだけど、爺さんにも。長生きして欲しいっていう願掛けの意味もあるけどね」
「士乃…」
「爺さん、出来るまで時間あるからもう少し寝てていいよ」
「いいや、起きてるよ」
「ふーん…お汁粉食べる?」
「貰おうかな、甘い?」
「爺さん好みにね」
「流石僕の自慢の娘だ」
「何それ」

くすくす笑ってお汁粉をお椀に注ぐ士乃。
それを、優しい眼差しで見る切嗣。
静かに流れる残り少ない親子の時間だ。

「はい、熱いから気を付けてね」
「ありがとう、いただきます」
「お、おはようございますー…」
「寝坊助与一っちゃん、おはよう」
「うっ…」
「あれだけ程々にね、って言ったのに飲み過ぎるから」
「す、すみません…」

切嗣が時計を確認すると、針は9時を指していた。

「寝坊助、と言われるにはまだ早い時間じゃあないかな?」
「おせちの手伝い、頼んでたの」
「そりゃあ寝坊助だ」
「うぅ…返す言葉もありませぬ…」
「ま、それ以上の寝坊助が2人居るし、大目に見ようではないか」
「有り難き幸せにございまする」

顔を見合わせて、くすくすと笑い合う2人。

「さーて、そろそろ仕上げに入ろうかな!」
「士乃、椀はここに置いておくよ」
「うん、あっ、爺さん!お豊と信起こしてきてくれないかな?」
「えー、信長はともかく、豊久は寝起きが悪くてすぐ殴るからなー」
「働かざる者食うべからず!!さっさと動く!!」
「はーい…」

二日酔いで痛む頭を押さえながら起きてくる2人に食事の準備の仕事をさせて、5人で向かい合って、そして和気藹々とおせちや雑煮、お汁粉を啄く…



「爺さん、正月が回ってきたよ」

ことり、と仏壇に供えられる手製のお汁粉。
そこに飾られている遺影には、満面の笑みを浮かべた切嗣が写っている。

「今年はお豊達や遠坂、桜や慎二、藤ねえ達とで過ごすよ。爺さんの好きな物もたくさん作ったから、爺さんも、来れたら来てね」

手を合わせてから、リビングへと戻る士乃。
今日は、切嗣が居なくなって初めてのお正月。
心なしか遺影に写っている切嗣の笑顔が深くなった気がした。


Happy new year
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