「それじゃ、行ってくるよ」
「士郎、食料は持った?テントや寝袋は?それからそれから…」
「母さん、大丈夫だよ。俺にはあいつらが着いてるんだから」
玄関口でおろおろするアイリを苦笑いで宥め、ちらりと視線だけを背後へと見遣る。
「士郎!」
「イリヤ、どうかしたか?」
「あのね、その…行ってらっしゃい!」
寂しいだろうに、作り笑いを浮かべて見送るイリヤをそっと抱き締める。
「!!」
「出来る時は必ず連絡するからな」
「っ…絶対よ!約束だから!」
「勿論だ、俺達が居ない分の母さんやじいさんの世話、出来るね?」
「うん!出来る!」
「約束」
「士郎、切嗣は今日外せない仕事が入って…」
「いつもの事だから、大丈夫」
リュックを背負って、ドアを開ける。
「母さん、イリヤ…行ってきます!」
今日は俺達の旅立ちの日、そしてここフユキシティとのしばらくのお別れの日。
「頑張ろうな」
腰につけてるボールホルダーに唯一ついているモンスターボールが、その呟きに答えるようにカタリと動いた気がした。
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