ぽけFate | ナノ
「ここがリリィタウンだ!」
「(案外こじんまりとしているというか…フユキシティと同じくらいか…??)」
「しまキングは…居ないようだな。士郎、悪いんだが遺跡の奥を見てきてくれないか?俺は村を探してみる」
「分かりました」

洞窟を抜け、吊り橋のかかった橋へと出る。

「かなり古いな…慎重に行かないとな」

1歩踏み出そうとした、その時…
谷底から強風が吹き上げ、士郎の体を攫い谷底へと誘い込む。

「っ!!」
「士郎!!」

ぶわり、と1人の褐色肌に銀髪の男性が慌てたようにどこからか現れ、手を伸ばしてくる。
士郎も咄嗟に手を伸ばすも届かず、重力に従い落ちていく。

「(ってか普通に出てくんなっつの…)」

そんな場違いな事を思いつつ、落下の衝撃を待っていると…

「きゅるるるるるるるるるーーー!!」

甲高い鳴き声と共に、何かに引き上げられる。

「うっお…!?」

男性の前に降ろされ、その近くに士郎を引き上げた何かが降り立つ。

「…ポケモン、か?」
「士郎、大丈夫か!?」
「あぁ、あいつに助けられたからな…ありがとう、助かった」
「…きゅるるる」

すっと何かを士郎に向けて放り投げるポケモン。
それをキャッチすると、何も言わずに飛び去った。

「…輝いてるな」
「…輝いてる石かね?」
「あぁ…あっ!それよりアーチャー!!お前勝手に霊体化解いて出て来て!!」
「そ、れは!!お前が何の抵抗もなく落ちそうになっていたからだな!!」
「人が居なかったから良かったものの!!誰かに見られてたらどうするんだよ!!フユキシティじゃないんだぞ!?」

士郎の生まれ育ったフユキシティには妙な風習があった。
魔力が発動した者は、年齢性別問わずに守護者となる英霊を召喚する事。
そんな風習があるのはフユキシティだけであり、魔力が確認されたのはこの世界に生まれる前の出来事、聖杯戦争の記憶がある者のみであった。
士郎に魔力が確認されたのは、ちょうど実の両親が事故で亡くなった日の事。
その時召喚されたのが、アーチャーこと未来の自分の可能性の一つであったエミヤだった。
召喚された日の事をよく覚えている。
以前の相棒であったセイバーは義理の母親であるアイリに召喚されていた為に自分は何が召喚されるか分からないで居たが、お互い顔を合わせた時に思わず叫んだ。

──「「なんでさ!!」」

ちなみに幼馴染みの1人であるあかいあくまこと遠坂凛は青い方のランサーを召喚していた。
士郎は切実に思った、頼むからトレードしてくれ、と。
英霊の存在はフユキシティだけでの認識である為、旅に出る場合や旅行に行く場合は英霊を霊体化させる必要があった。
誰にも知られてはならない…そんな暗黙の了解がフユキシティの住人達にはあったのだ。

「ったく…でもまぁ、助けようとしてくれた事は嬉しかった。ありがとう」
「っ、ふん…」

相変わらず皮肉屋で素直じゃない英霊だ…自分だけど。
一体誰がこんな風にしたんだか…自分だけど。

「しっかし、あのポケモン何だったんだろうな」
「さぁな。さて、そろそろ行くぞマスター」
「あ?でもしまキング…」
「ほぉ?私の千里眼を疑うと言うのかね?」
「や、それに関しては信頼してる」
「…そうか」
「あー、ここに来て無駄足かー」

霊体化したエミヤを確認し、遺跡を後にする士郎。
その時、エミヤの顔が真っ赤だった事は誰も知らない。
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