Fateコラボ | ナノ
シオンは言った、己は転生を経験していると。
転生トリップ、が何かは分からないが、この世界が彼女にとって物語の世界だった、と言っているから、異世界からやって来たのだろう。
あの悲惨な未来を彼女も知っていると。
ならば…彼女と共に未来を変える事が出来るのではないだろうか。
そして、この俺がオリジナルのギルガメッシュでないと分かった理由は…この、今だに閉じたままの瞳だと言う。
彼女の言う通り、オリジナルのギルガメッシュの瞳は鋭くも強い意志を持ち、人を笑いながらも認め、人を引きつける孤高の王者にふさわしい瞳だった。
駄目、駄目なんだ。この瞳はシオン、君のその強くも美しく、強い矜持を持つ心をいとも容易く折ってしまうんだ。
全てを諦め、拒絶し、濁ってしまったこの瞳を見てしまった時、彼女は…心折れてしまうだろうか、そうでなかったとしてもこの俺を軽蔑するだろうか、同情するだろうか。

「貴方がもし……この戦争で私の隣を歩んでくれるなら。私は貴方に私の全てを捧げます。命など、いらないと決めていたから」
「……それほどまでして、何を望む」
「第四次聖杯戦争の終結を。誰もこの悲しい戦いで死を迎えることない、問答無用のハッピーエンドを」

それは、俺が人だった頃に成し得なかったたった一つの願い。
聖杯に願い、そしてまたこの悪夢に囚われる事となった、願い。

「…貴様は、それが悲惨な結果だったとしても、その願いを曲げない自信はあるか」
「私の願いはこれだけ。これ以上、何も願う事などないから」
「命を賭けてまでか?」
「勿論」

成程、これは…もしかしたら、もしかするかもしれない。
俺が成し得なかった事を、彼女となら…

「…俺の負けだよ、シオン」
「あっ…名前…!」
「改めて、よろしく頼む」

彼女の目の前に跪く。

「あ、あのっ!?」
「俺の我儘を聞いてもらってもいいか」
「…?」
「頼むから、命を投げ出すな…命などいらないなどと…2度と言うな」
「!!」
「もう…もう2度と…頼むから…!」

情けないと思う、肩が、全身が震える。
今でも目の前で何人もの主人を失ってきた。
その度に、自分の心が軋む音が、ひび割れていく感覚がした。
もう2度とあんな思いは、痛みはごめんだ。
しばらくの間沈黙が続いた。
呆れただろうか…と、その時だった…

俺の体を、暖かい何かに、包まれたのは。
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