Fateコラボ | ナノ
「…第四次聖杯戦争、か」

食器を片付け、一息つきながらこれからの事について考える。

「…」

誰一人として欠ける事なく助ける。
これが、いかに困難で大変な事か、身をもって知っている自分としては、シオンに無理だけはして欲しくない。
あの変態共の事もあるし、何より…本人の抱える厄介事もある。

「…やはり、人というのも面倒なものだな」
「?どうかしたの?」

身支度を済ませたシオンが首を傾げながら近付いてくる。

「いや、なんでもない。出掛けるのか?」
「うん、ギルの必需品買いに行こうかな、って」
「こう言っては何だが、また狙われるかもしれないんだぞ?」
「う…で、でも…ギルが居るから平気よ…?」
「素直に出掛けたいと言えばいいものを」

全く、まだまだ心を開いてもらえてはいないのだろうか。

「着替えてくる」
「え?洋服あるの?」
「多少はな」

バビロンから黒いシャツに学生服を模した上着とズボン、黒いブーツを取り出す。

「見事に全身真っ黒…」
「派手なのは好かない」
「…本当に私の知ってる英雄王とは真逆」
「む…」

彼と比べられては困る。
俺は彼程派手好きではないし、傲慢でも高慢でもない。
ただ少しだけ、欲張りで強欲なだけだ。

「隣の部屋を借りるぞ」
「え?なんで?」
「…見たい、と言うのなら別に構わんが?」

と、わざと上半身の鎧に手をかけると、意味を理解したのか顔を真っ赤にして部屋に押し込められてしまった。

「くくくっ…愉悦よな」
「早く着替えてっ!!」
「はいはい…はー…やっと楽になった」

鎧を脱ぎ、私服に着替える。
余計なアクセは付けない。
そんなの重いだけだ。

「待たせたな」
「…イケメンってやっぱりずるいのね」
「は?」
「なんでもない!行こっ!!」

腕を引っ張られ、連れて行かれたのは大型ショッピングモール。

「なかなかの規模だな」
「そうだね」

互いにキョロキョロと周りを見ながら、ショッピングモール内を回る。

「ギル、何か欲しいのはある?」
「別にこれと言ってないが…強いて言うならば、キッチン用品か」
「…どこかの誰かさんとそっくり」
「は?」

と、ふと一人の男の子を視界に捉える。

「あ…」
「ギル?」
「シオン…衛宮士郎だ」
「えっ!?」
「しっ…視線だけ振り向け」

目の前には、家族と出掛けているらしい幼少期の衛宮士郎の姿。
あの、屈託のない笑顔…あれが、第四次聖杯戦争によって、絶望へと変わるのか…そう思うと、胸が軋む音がした気がした。

「衛宮士郎…」
「ギル…大丈夫?」
「…あぁ、大丈夫だ。シオン」
「何?」
「…絶対に護ってみせような」
「!!うんっ」

護るべきは、彼の、他の皆の、笑顔と変わらぬ日常だと、再認識した。
それには、勿論シオンも含まれている。
その為なら、俺は、この身を削ってでも、地面を這ってでも、この聖杯戦争に勝ってみせる。

余談だが、この後立ち寄った店で親子に間違われ、シオンが拗ねた。
何だそれは、貴様可愛いか。
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