あの後、寝る所がない事に気付いた俺は、バビロンから掛け布団を取り出し、ソファーに横になって眠った。
いいよな、バビロン。何でもしまえて何でも取り出せる。
「お、おはようございます…」
「うむ、おはよう。早起きだな、感心感心」
「だから…子供扱い…」
頑なに子供扱いを嫌うが、むぅ、と膨れる所はまだまだ子供らしい。
「拗ねるな拗ねるな…さて、シオン。朝ご飯はフレンチトーストなんだが「2枚」…即答か貴様」
どうやら昨晩の料理で胃袋を掴んでしまったようだ。
転生を繰り返す中で培った料理スキルは伊達じゃない。
「…ギルガメッシュって」
「ギル、だ」
「え?」
「呼びにくいだろう?ギルで良い、俺が許可する」
「…ふ、ふふ…ギルって、家事得意なの?」
「あぁ、まぁな」
卵と牛乳、砂糖を混ぜてパンを浸す。
その間に生クリームを泡立て、ホイップクリームを作る。
「…手際いいなぁ」
「ははは、そう言ってもらえると嬉しいよ」
ホイップクリームが仕上がったら、十分に浸したパンをバターをしいた熱したフライパンで焼き目がつくまで弱火で焼く。
「わぁ…いい匂い…!」
「シオン、皿を出してもらえるか?」
「はーい!」
皿に盛り付け、ホイップクリームを添えたら完成だ。
「ほら、出来たぞ」
「お店で出てるのみたい…!!」
瞳がキラキラと輝いている。
うん…可愛い。
「ギルも食べよ!」
「あぁ、いや…俺は…」
「…駄目?」
「うっ…すまん…フレンチトーストは…甘過ぎるだろう…?」
「あ、そっか…コーヒーもブラックだったもんね」
「それに、英霊は食事を取らずとも生きていけるからな」
「…それって、寂しいね」
「え?」
「美味しいもの知らないままだなんて、寂しいよ」
「…シオン」
参った…まさか、そんな…俺にとって当たり前の事でも、彼女にとっては寂しい事で、その事で俺の事を思ってくれるのが…
こんなにも、嬉しいだなんて…!
「…はぁぁぁ…」
「ギル!?」
「あぁいや…大丈夫だ…」
思わずしゃがみこむ…顔が熱い…駄目だ、にやける。
「つくづく、貴様が主人で良かったと、心から思うよ…」
「いきなりデレた!?なんで!?」
顔の熱を冷ます為に立ち上がり、キッチンへ逃げる。
「ギル…?」
「…一緒に食べるんだろ?待ってろ、自分の分も作る」
「!!はーい!!」
くっ、きっと顔は隠せても耳は隠せてないから、赤いのはバレているんだろう。
後ろから笑いを噛み殺す声が…笑うな!!
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