文ストコラボ | ナノ
「ちーっす」

例の事件から数日後。
灯真の傷口もすっかり塞がり、今では活発に動けるように。

「灯真ちゃーん!!」
「ぐえっ!!」

どんっ!と乱歩にタックルされた灯真。

「あ、のなぁ…!!」
「ごめんごめん!ふふふ…」
「報告書提出しないといけないから、また後にしてくれ…」
「やだやだ!」
「こんの…!!」
「あー…灯真さん、僕が持って行きますよ」
「やめろ敦、こいつを甘やかすな…」
「でも、離れそうにないですよ」

苦笑する敦。
確かに、腰辺りに顔を埋めた乱歩は離れそうにない。

「…悪いな、敦」
「いえ、社長に持ってけばいいんですよね」
「頼むな」

敦が社長室へと向かい、社内には灯真と乱歩の2人だけに。

「静かだな…」
「いつも騒がしいからねー」
「そうだなー」

ソファーに並んで座る。

「…昔と比べると、随分と人が増えたな」
「こんなに賑やかになるとは思ってなかったけどね」
「乱歩は嫌なのか?」
「んーん、全く。楽しいよね」
「確かにな」

くすくす笑って、乱歩にもたれかかる灯真。

「っ!灯真ちゃん…?」
「あの時、」
「??」
「夢乙女さんに言われた言葉をずっと考えてた」
「あ…」


―「お2人は恋仲なのですか?」


ぐわぁっ!!と頬に熱が集まり、耳や首まで赤くなる乱歩。

「恋仲か、って聞かれた時…俺ってお前の事好きなのかなー、ってなって。嫌いではねぇなー、ってなって。じゃあ、何の好きって感情なのかなー、ってなって」
「…そこから?」
「悪いか、恋愛感情摩耗してんだよ」
「摩耗…?」
「何でもね。で、考えて…結局考える事もなかったなー、ってなった」
「え、放棄!?」
「最後まで聞けよ馬鹿」

真面目な顔で乱歩を見つめる灯真。

「我侭で、自分さえ良ければ全て良しな自己中心的な野郎で電車の乗り方すら分からない手のかかる奴で…」
「…貶しすぎじゃない?」
「黙ってろ。悪い所挙げたら限りがないけどさ…そんな所も含めて俺、乱歩が好きだよ」
「!!!」

ふうわり、と綺麗に笑う灯真を普段は閉じている目を見開いて見つめる乱歩。

「…で、返事は」
「っ!!ぼ、僕の方が先に好きになったんだから!!」
「何の競い合いだよ…好きになるのに後も先もあるか?」
「言動が男前過ぎるよ灯真ちゃん…」

頭を抱えて、ソファーの上に蹲る。

「何だよ…」
「男としての沽券が…僕が手を引きたいのに…」
「??」

そういった方面には疎い灯真に本格的に危機感を覚えた乱歩だった。
この後、実は隠れて見ていた社員達にからかわれ、福沢に静かに2人共頭を撫でられるのだが、またそれは別の話である。
TOP