さて、前回無事にタマゴからトゲピーが孵り、めでたしめでたしと思われた。
だがしかし、小夜左文字は今現在、トゲピーとの接し方について考えあぐねていた。
「僕が…お兄ちゃん…」
目の前で鞠を転がして遊んでいるトゲピーを見つめる小夜。
「…お兄ちゃんって、何するんだろう」
自分には兄が2人居る。
その2人がするようにしたら良いのだろうが、生憎と兄2人はまだ顕現されていない。
「…そうだ」
自分の居る本丸には一期一振が居るではないか。
彼に聞こう、とトゲピーを残して、彼の元へ走った。
「──って訳なんだけど」
「成程…」
ちょうど部屋から少し離れた縁側でお茶を飲んでいた一期一振に相談する。
相談内容を言い終わると一期一振は嬉しそうに微笑み、小夜の頭を優しく撫ぜだ。
「そうですね…明確には言葉に出来ないのですが、私ならば…ただ、愛を持って接してやれば良いかと」
「…愛?」
「えぇ、ただただ貴方の事が好きなのだと、愛しているのだと、そういう気持ちで接してやればきっと大丈夫です」
「…そう」
ありがとう、と礼を言い、元の部屋へと来た道を戻る。
「びぇぇええええええええ!!」
「っ!?トゲピー!」
部屋で大泣きしているトゲピーに心底驚く小夜。
「ちょき…!」
つぶらな瞳いっぱいに涙を浮かべ、小夜へ短い手を伸ばす。
「え、と…」
──「えぇ、ただただ貴方の事が好きなのだと、愛しているのだと、そういう気持ちで接してやればきっと大丈夫です」
「…1人にして、ごめんね」
そう言い、ゆっくりと、危なげなくトゲピーを抱き上げる。
「大丈夫、僕はここに居るから」
「ちょき…」
離れちゃ嫌、1人にしちゃ嫌とでも言うように顔を押し付けてくるトゲピー。
「ん…ごめんね」
数十分後、一期一振が部屋を覗きに来ると、そこには1人と1匹が抱き合うようにして眠っていた。
愛の伝え方は十人十色
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