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「え?灯真が子狼さんの所に?へぇ、カルデアの。ふんふん…」
「士乃ちゃん、どうしたのー?」
「ちょっと静かに。は?ハチさんが出る?あー、大暴れされる前に何とかしないとね…灯真?その時じゃない?最悪、■■に■■を■■■■もらえばいいんだからさ…うん、じゃあね」
「仕事?」
「そう。灯真がカルデアのマスターと合流したって。だから…」
「そのマスターってのを排除したらいいんだね?」

にやり、と猫目を細めた男の後ろで大勢の人の気配が動いた。







「そんな…お義父さままで…私、どうしたら…」

ボロボロとその双眸から大粒の涙を零す灯真。

『頼みの綱が駄目になったか…』
「多分、だけれど、お義姉さまも、同じような事に、なってると思うの…」
「現状、八方塞がり、か」

と、どこからともなく大型車のエンジン音が聞こえてくる。

「今度は何!?」
「あ、あ…!!」
「灯真さん?」

灯真の視線の先を追うと、黒のダンプカーが大勢を乗せて走ってくる。

「な、何あれ…!?」
『何事かな!?物凄いスピードで大勢の生体反応が近付いてきてるけど!!』
「私達にも何が何やらさっぱりです!!」
「灯真ちゃんやっほー」

ダンプカーから、1人の男性が降りてくる。
天パに青いバンダナを巻き、スカジャンを羽織った猫目の男性は、口元には笑みを浮かべているもののその目は笑っていない。

「…村山、さん」
「びっくりしたなー、灯真ちゃんが俺らを裏切るなんてさー。ね、今ならまだ間に合うよ??こっちに帰っておいでよ」
「い、いや、嫌です!!だって、こんなの、おかしい…!!」
「…だってさ、」




「──────────本当に、残念だよ」





「!!!!灯真さん!!」

マシュが咄嗟の判断で灯真の前に盾を突き立てる。
ガキィン!!と金属同士がぶつかる音が響き、マシュの盾が弾いた物…矢が地面に突き刺さる。

「あ、ありがとう…!!」
「いえ!!無事で良かったです…!!」
「嗚呼、嫌だなぁもう…どうして君達なんだろう」

その声の主が、ダンプカーの運転席の真上の屋根に立つ。

「あれ、は…」
「敵だと分かっているのに、顔が同じなもんだから手加減をしてしまうよ」
「ねぇ士乃ちゃん、士乃ちゃんが出来ないなら俺達がやるけど」

男性のその台詞にダンプカーの後ろに乗っている顔の厳つい男達が賛同の声を上げる。

「それで村山達が傷付くのは、やだなぁ」
「ヤバい士乃ちゃんが好き過ぎて俺死にそう」
「…えっと?灯真さん、あの人達は…?」
「…鬼邪高校、ここSWORD地区の、『O』を担うグループの1つです」
「こ、高校生…!?」
『年齢詐欺にも程があるね!!』
「ダヴィンチちゃんが言える事…?」
『それはそれ、これはこれだ』
「そ、それで、あの人が、鬼邪高校のトップの、村山良樹さん、です」
「よろしくね〜」
「それで、あそこに立ってるのが、村山さんの恋人の、衛宮士乃さん、です」
「「エミヤ…!?」」
『そう言えばどことなくリミゼロや投影魔術の礼装達に似ているような?』
「どうだっていいでしょう、そんな事。貴方達は、ここで、消えるんだもの」
『!!サーヴァント反応だ!!』





「───────また、『客人』かね」





「!!エミヤオルタ…!!」

灯真に士乃と紹介された女性の隣に、1人のサーヴァントが現れた。
それは、自分達がよく知るサーヴァント…エミヤオルタであった。

「ど、どうして!?何故サーヴァントが…」
「それに答える義理はないと思うが?」
「村山達も、手伝ってね」
「!!行くぞてめぇらぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!」
「「うぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!!!」」
「来ます!!戦闘態勢に入ってください!!」

ざっ、と藤丸と立香が構える。

「お手並み拝見、といきますか」
「来て!!バーサーカー!!」
「■■■■■■───────────!!!!」
「へぇ、12の試練、英雄ヘラクレスか」
「いいねぇ…強そうじゃん」

ぎらり、と村山の目が光る。

「俺達が全部持って行っても、文句言わないでね」
「…死なないでね、手間が増えるから」
「冷たい士乃ちゃんも大好きー!!」










「交戦開始したか」
「…どうする」
「しばらくは静観だな、夢乙女や達磨もそうするだろうさ」
「こっちに来たら、迎え撃っても構わないだろう?」

開始された交戦を、遥か高い所から盗み見る2つの影。

「あぁ、構わん。街を守る為だ」
「…だ、そうだ。皆、いつでも動けるよう配置についておけ…」

その言葉の後、いくつもの影がその場から離れていく。

「俺はもう行くが、お前はどうする」
「…もう少し見て行くさ」
「…そうか」

そして、その場には1人だけになった…筈だった。

「…どうかしたか、■■」
「…なぁ、あんた、どうして■■■■んだよ」
「…そうか、お前もか…お前も、覚えているんだな───────────ユウ」

暗がりから現れたユウと呼ばれた男性の顔は、酷く恐怖に染まっていた。
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