バサ雁パロ | ナノ
いつも窓の内側から眺めているだけの風景でした。
幼馴染みの葵やその夫である時臣から外の様子を話されても、ただただ私には関係ない話だと、そう思っていました。
私はいつ死んでもおかしくないから、そしてこの顔の醜さ。
今更何かを望むのは罰当たりな事。
だけど、きっと魔が差したのでしょう。
その日、私は己の体調の良さを過信していたのでしょう。
こっそりと、誰にも内緒でお屋敷を抜け出して、変装して街を散策したのです。
どれもこれもキラキラしていて、輝いていて、尚更自分とは程遠い物なのだと実感してしまって、虚しくて悲しくて、得体の知れない何かに押し潰されそうになって…

「うっ…」

急にずしりと身体が重くなってきた。
呼吸も難しくなって、涙が止まらない。
この感覚はきっと、高熱が出る前兆だ。

「もし、レディ。大丈夫ですか?」
「っ…?」

そんな私に声をかけてきたのは、1人の警官らしき青年。
私と視線を合わせた途端に、青年の頬に赤みがさす。

「っ、失礼…具合でも悪いのですか?」
「お屋敷に…!間桐の、家に…!!」
「!!分かりました…失礼します」

その言葉の後に、私はその青年に横抱きにされる。

「しっかり掴まっててください」

その後、お屋敷まで運んでもらった私は兄の鶴野や葵、時臣にしこたま怒られてしまい、なおかつ高熱を出してしまい寝込む事になってしまったのでした。

「…お礼も言えなかった」

あの時、お屋敷まで運んでくれた青年にお礼すら言えてない事にベッドの中で気が付く。

「…葵や時臣にお願いして、お礼を言ってもらえばいいか」

これが、貴方と私の初対面。
TOP