ぐらつく関係



あたしたちはいわゆる仲良し四人組ってやつで。あたし、柳生、奈津子、仁王の四人は中学入ってからずっと仲がよくて、高校に入ってもそれは変わらなかった。
恋愛感情が芽生えた、それ以外は何一つ。

「におー」
「なんじゃ、相澤」
「ほんっと数学わかんない。教えて」
「それが物を頼む態度かの。俺昼飯まだ食っとらんぜよ」

クラスはあたしと仁王が一緒で、奈津子と柳生が一緒。

仁王は話しやすいやつだし、いいサボり場所を教えてくれる。そんな頻繁にはサボりはしない、だけどたまにサボってしまうことは、あるわけで。大抵それは授業じゃなくてホームルームだったりするんだけど。

「いいじゃんか。だって放課後はお互い部活大変だしさ、もう今さら頼むとかそういう次元じゃないし」
「おうおう、大変じゃのう女子テニス部部長さんは」
「あんたに言われたかないよ、男子テニス部の詐欺師さん」

正直あたしは、詐欺師だなんてこいつには似合わないような気がする。だってこいつ背は高いけど、なんかちょっと癒し系だし。なんていうんだろう、癒し系を狙っている訳じゃないんだけど癒し系になっちゃった、っていう感じ。

「今日、こっちの練習見にこんか?」
「いやいや人の話聞いてます?今日も練習があるんだって」
「今日は相澤の愛しの柳生くんが俺とダブルス組んで試合するぜよ」
「……気が向いたらね」

前言撤回。こいつやだ。

悔しいことに、こいつが言うようにあたしは、紳士こと柳生が好きだ。柔らかい物腰だとか丁寧な仕草だとか優しい態度とか、すべてが好きだ。
そしてそれを知っているのは親友の奈津子ではなく、この目の前にいる、詐欺師。どうしてこうなったかは、すぐにわかる。奈津子に言えばきっと、遠慮するに決まってるから。

「お前さんが好きなんは柳生、柳生が好きなんは平沢、……嫌な三角関係じゃな」

違うよ、仁王。三角関係なんかじゃなくてさ。奈津子があんたのことが好きなんだっつの。どう考えても四角関係です、あーもー。

「もう、どうでもいいから数学教えてよ」
「はいはい。あ、そういえば明日小テストあるきに」
「きーいーてーまーせーんー!」
「寝てるのが悪い」
「数学が存在しているのが悪い」

すべてが一方通行の片思い。
あたしは柳生が好きで、柳生は奈津子が好きで、奈津子は仁王が好きで。
そして、仁王があたしを見つめる視線は柳生が奈津子を見つめるそれにとても似ていて。
あたしだって鈍いわけじゃない。誰が誰のこと好きだとか、誰が付き合っているだとか、気付くもので。

「相澤、俺が教えてやるんじゃから満点取らんと許さん」
「無理無理無理無理、ちょっとあたしの頭の悪さをなめないでよ」

気付いていないフリをしているあたしは、卑怯だ。
ぐらつき始めた関係は、修復できないのだろうか。




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