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目を引く髪色に思わず足を止める。白?銀?
その人はただ歩いているだけで、なんかめちゃくちゃに強そうだったので、くぐいは思わず声に出てしまった。

「……………ラスボスか?」
「こら!弟くん!」

すぐに隣を歩いていた自隊の隊長、つぐみがくぐいの口を掌で慌てて覆って隠した。
確かに失礼なことを言った自覚はある。でもこの人からとんでもなくラスボス臭がしたので仕方ない。ゲーマーには抗えない性だった。
言われた本人はぴくりとも表情を動かさず、むしろ隣を歩いていた人が和やかに笑って対応した。

「お気になさらず。椋は正真正銘の最強なので」
「うわぁ〜〜〜ヒワさんと戦わせないと」
「こら!!!」

口を塞がれていてもくぐいの口は大人しくならなかった。つぐみがひたすらに背後で焦っていたが、そんなこと言われても口が勝手に。

「この子、楢みたいじゃない?」
「……………」

くぐいを見下ろして穏やかそうな人は面白そうに笑った。そうして会釈をして二人は再び歩いていってしまう。その先にあるのは上層部が集う会議室のみ。
ほっとしたように、つぐみがくぐいの口から手を離した。くぐいは見たことのない二人の背をじっと見送る。少しだけ会話が聞こえてきた。

「面倒くせぇ……なんで俺が……」
「嫌がらせ以外無いと思う」
「三門市を木っ端微塵に」
「そんなことしたら後がさらに大変そう。近界民とか今の人手じゃ無理」
「頑張ってくれ櫟」
「このひとひどすぎ」
「なら若いやつにやらせるか」
「楢が喜々として梛の背を押す図が容易く想像できた」

たいへんだ、三門市が木っ端微塵にされる。

見た目に反して物騒な二人組だった。あのラスボスならできそうでふるえた。会話内容を聞いていなかったのか、つぐみが呑気に感嘆の声をもらす。

「すっごい美人だったねー。口悪いけど」
「たいちょー、あの人達がじゅじゅちしってやつ?」
「うん?今言えてた?」
「じゅじゅち、つ、し!」
「うーん、可愛かったからセーフ」

自隊の隊員に激甘ないつものつぐみは、そうだよと何を視たのか、少しだけ苦しそうな顔で肯定した。あ、今日の任務は休ませよ。
厄介なサイドエフェクトを持つ隊長。あの一瞬顔を合わせただけでこの様子だと、想像を絶するような生活を物騒な二人はしているのだろう。こわい。三門市もふくめて日本ってぜんぜん平穏じゃない。ふるえた。

とりあえず今日は休みだと確信したので有能なくぐいは即スマホを取り出した。本日本部で見かけた顔ぶれの中で最適者を呼び出す。

「あ、もしもし迅さん?たいちょー具合悪くなっちゃったから迎えに来てくんない?」




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