ぐるりとそこを見回す。
トリガーを起動しているので寒さは感じないが雪がしんしんと積もっているそこは、地下神殿のようだった。
国近が喜びそうだなと思った。

「すげ………ダンジョンみたいだな」
「ダンジョン?」
「迷路、みたいな」

遭遇した敵を倒せばレベルが上がりそうだ。
メティはよく分かっていないようで首を傾げている。

「お友達、通信できる?」
「あ、ああ」
「艇できてるんだよね?じゃあ城を背にして左側に湖があるからそこに艇をつけて。慶達が合流したら直ぐに発った方がいい。うちは今、飢えているから、巻き込まれる前に」

太刀川は説明の途中であることに気が付いてメティに手を伸ばす。

「う、わっ」

軽々と抱き上げるとメティは驚いた顔をする。

「なに?」
「足冷たくないだろ?」
「重くないの?」
「軽いぐらいだな」

こんなに親切だと普通怪しいぐらいだが、メティは善意なんだろうなと思った。彼は素足で石畳や雪の上を歩いていた。
普通なら靴ぐらい履くだろうに。
用心深い風間も何も言わないので、恐らくメティを信じているのだろう。
太刀川が寝ている間に何か話したのかもしれない。
空を見上げれば、地表は大分上のようだがそこからしんしんと雪がふりそそいでくる。

「ほんとに雪がすげー………ホワイトクリスマスだな」
「クリスマス?」
「家族とかダチとか恋人と、ご馳走食べてプレゼント渡しあう特別な日」
「正しくは違うがな」

風間の突っ込みに、「え、違うの?」の太刀川が驚くと、呆れた顔をされた。
そのやり取りにメティは腕の中でふふっと笑った。

「俺の国、もうすぐクリスマスなんだ………ってもう過ぎたな。あーあ、間に合わなかった」
「残念!慶が捕まらなかったら間に合ったわけだ」
「あ、ひっでー」
「全くメティの言う通りだ。ホールケーキを所望する」
「風間さん!?」

便乗してくる風間に太刀川が悲鳴を上げる。
風間のいうホールケーキはおそらく1つじゃすまされない。
捕まった挙句、牢屋で寝ていたことあたりを後々説教されることが目に見えていた。

「慶はクリスマスはなにをするの?」
「クリスマスはー、俺のチームメイトに飯おごって、師匠に飯おごってもらう日」
「食べ物ばっかり………」
「俺の国は飯がうまいぞ」
「カレーがおすすめだ」
「へー、食べ物がおいしいのはいいですな」
「だろ?」

太刀川は目を細める。
ああなんだか、メティと温かいものが食べてみたいな。




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