年上に囲まれる


//本部滞在時、根付さんは出せなかったごめんなさい












最上階の会議室の入口に立てば、ドアが自動で開く。
手にした機材が重くて俺の腕が限界だ。

「鬼怒田さーん、機材持ってきましたー」
「やっと来たか、こっちだ」

足を踏み入れれば鬼怒田さんが待ちかまえていた。
手で招かれて俺はそちらに向かう。

「お、せっせと働いてるな」
「林藤さん。お久しぶりです。俺もう倒れそうです」
「若者の癖に何言っとる!」
「いたっ!鬼怒田さん酷い……」

林藤さんもいるということは上層部の会議なんだろう。
久しぶりにみた林藤さんにちょっとホームシックになった。みんな元気かなぁ。
鬼怒田さんに叩かれた腰をさすりながら機材の準備をする。
システムがメインのエンジンなんだけどな。こういうのって別のエンジンの仕事だと思うんだけど。というのは鬼怒田さんにまた怒られちゃうから黙っておく。
ケーブルを這わせていると声をかけられた。

「お疲れ様、結城くん」
「本部での作業も板についてきたね」
「忍田さん、唐沢さん、お疲れ様です」

二人に頭を下げて挨拶する。
人数が揃い始めたので急いで準備しないといけない。
唐沢さんが俺の肩に下げていたケーブルの束を持ってくれた。

「あ、ありがとうございます」

ケーブル結構重いけど大丈夫かなと不安だったが唐沢さんラグビーやってたんだっけ。なら大丈夫だ。俺より断然力あるわ。

「結城くんそのまま本部に居付いてもいいんじゃない?」
「いやいやいや、俺なんてまだ何も分かんないですし」
「期待しとらんが雑用のために居ろ」
「鬼怒田さん俺の扱い酷くないですか!?」

なんか当たりが厳しい。
それが鬼怒田さんなりのスキンシップだから気にしないけどね。
とはいえ本部に永住は嫌だ。断り方に困っていると林藤さんが庇ってくれた。

「ちょっとちょっと、勝手にうちのメンバー口説かないでよ?」
「ふん、ひよっこは黙っとれ」
「鬼怒田さん、あまり結城くんを困らせないであげてください」

上司じゃないのに庇ってくれるなんて、忍田さん、好き。圧倒的に旦那さんに欲しいタイプ。年齢問わず女性人気高そうだ。
シュッと自動ドアが開く。

「城戸さん」

忍田さんの声に俺もそちらに顔を向けた。
いつも真顔の城戸さん。怖いと評判だが、俺は普通に格好いいと思ってる。俺もこんな感じに落ち着いた大人になりたい。俺は頭を下げる。

「お疲れ様です、もう少しで終わるので。すみません」
「構わない」

あとはメンバー的に根付さんだけかな。
根付さんが来る前に終わらせたい。
電源をひいて、パソコンを立ち上げる。
そこで首から下げた支給された携帯が鳴った。なんだよ急いでるのに誰だよ。
画面を確認ぜず、応答する。

「はい、結城です」
『お前何処ほっつき歩いてるんだ』
「うげ、先輩」
『ああ?随分といい挨拶だな』
「すんません!今鬼怒田さんに呼ばれて会議室のセッティング中です」
『あー…まだかかるか?』
「なるはやで頑張ってます」

先輩だった。怖いと評判の先輩だった。俺も怖いと思ってる。
手元ではパソコンを弄りながらきちんと応対する。
何か用事があるようだが、見ての通り作業中だ。
これでも結構急いでるんでもう急げません、とは先輩には言えない。先輩の方が何百倍も仕事してんだから、無理とか言えない。

「あ」
「城戸だ。何か急ぎか?」

城戸さんに携帯をとられる。
そのまま城戸さんが先輩と話し始めるからぽかんと見上げてしまう。
二言三言話して、城戸さんは俺に携帯を差し出した。

「あ、あの」
「話はついた。落ち着いてやれ」
「っ、ありがとうございます!」

携帯を受け取る手が震える。心臓がどきどきする。
これはつまり、城戸さんが先輩にかけあってくれたってことだよね。
やべぇ、格好いい。このどきどき感。もしかして、これ恋かな!?
アイドルと握手しちゃったファンみたいな顔で城戸さんが椅子に座りにいく背中を見送った。

「城戸さんめっちゃ良い人」
「本人の前で言えるのは結城くらいなもんだな」

俺上層部なら城戸さん推しだから。推しメンの格好いいとこ見たらどきどきしちゃうよ。センターにするためにCD買っちゃうよ。
そんな間抜けな事を考えていたら、林藤さんのあきれた声が聞えてきて、はっと現実に戻った。



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