大規模侵攻7













指令室からの通信を聞きながら、黒トリガーをうかがう。
諏訪隊だけでは時間稼ぎしか難しいだろう。

「忍田さんが出るのか…だとすれば大丈夫だと思うけど…」

問題は間に合うか、だな。
一応俺の警護にとつけてくれた堤くんがこちらに合流する。
堤くんにパソコンの操作を任せて俺は過去視に専念する。
どうも融通がきかないこの能力は、俺にどうでもいい情報しかくれない。
広い研究室内で迷って泣いたなんて、そんな記憶今は別に視たくない。

「硬質化されたトリオン反応…?マークします」

その言葉に振り返る。
どうやら弱点にヒットしたようだ。
俺はディスプレイをのぞき込む。
確かにマークされているが、それが瞬時に増えた。

「硬質化の反応が増えた!?」
「堤くん、ちょっとごめん。解析する」

ダミーを作ったのだろう。
俺は堤くんにパソコンの前を譲ってもらって、解析をする。
かなり精巧だ。まとめてはダミーを特定できない。しかし何もしないよりはいいだろう。一つずつ可能性を潰していく。
すると間をおかず衝撃がその場にはしる。
地震が起きたような揺れ。そして仮想空間が解けた。

『結城!空間が壊れた、黒トリガーが出てくるぞ!戻れ!』
「大丈夫、です。解析を続けます」

鬼怒田さんが心配してくれる気持ちはとても有り難いが、ここではまだ引けない。
堤くんが俺を庇うように立って警戒してくれる。
一刻もはやくと焦ると、再度衝撃が走った。
予想外の展開に俺は驚く。

「壁が壊れた!?」

そこから現れた忍田さんに俺は絶句する。
なんというダイナミックな登場の仕方。これは惚れる。
唖然とする俺に、忍田さんから通信が入る。

『すまない、結城くん、壁の修理を頼めるか?やつを逃がすわけにはいかない』
「ううう忍田さんが仕事増やす…」
『壁の修理は他のやつにやらせる、お前は先に黒トリガーの解析を終わらせてさっさと戻ってこい!』
「はい」

壁の修復を鬼怒田さんに任せて、俺は解析を続ける。あと、10個か。
風間くんの通信を聞きながら、俺は堤くんに声をかける。

「気体化……堤くん、空調いれてもらえる?」
「はい」

気体化しようとしていた黒トリガーが空気により押し戻される。
忍田さんが風を全身で感じて、どこかのミュージシャンみたいになったけど、笑っている場合ではない。

『やつの弱点の位置情報をくれ』
「つぐみさん」
「解析が間に合わなくて申し訳ないのですが一部ダミー残ってます」
『構わない、充分減らしてくれている』

情報を送ると、忍田さんは全部斬った。
す、すげぇ…。
流石太刀川くんの師匠だなと思いながら、俺は堤くんに頷く。

「……ここでできる援護はこれまでだね。堤くん、諏訪くんのところへ」
「はい」

あとは、作戦通りにいくだろう。
堤くんが俺の傍を離れて諏訪くんのもとへ行く。
俺は観客席の端で様子をうかがう。

『結城』
「もう少しだけ視せてください、確認したいことがあります」

なんで、黒トリガーは俺のことを知っているんだ?
俺はこいつのことを知らないのに。
その理由が知りたくて、俺はその場にとどまることにした。









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