当真のクラスメイト10


//恋人





暗闇でごそごそ動く。
靴下の中にプレゼントを入れようとして、暗すぎて手元が見えず、うまく入らなくて焦っていた。
先に入れておけばよかったと思ったが、後の祭りだ。
入らないやべぇ。
完全に手元に集中していて、無防備だった背中に何かが抱き着く。びっくりして変な声でた。

「うひょ!」
「……しとど、なにしてんだよ」
「いや、あの、良い子の影浦くんのためにプレゼントを配達に…」
「ふーん………」

寝ているはずのカゲがいつの間にか起きてきていたようだ。
これだけごそごそしてしまえば、ばれて当然かもしれない。
段取り悪すぎだ。明日の朝、プレゼントがある!と喜んではしゃぐカゲは見られそうにない。現実的には、多分なにこれ?ぐらいな反応しか得られないだろうけれど。
俺は靴下に入れるのをあきらめて、プレゼントをその場に置く。
これプレゼントですので、明日開けてください、と言ったらカゲはふんと鼻を鳴らした。

「相変わらずくだんねーこと好きだな」
「意味のないことに意味があるんだぜ」
「お前の話つまんねぇ」
「これはひどい」

ちょっとはクリスマスっぽいことをさせてほしい。
カゲはクリスマスは防衛任務だそうだ。
それはまぁ仕方ないし、むしろお疲れさまっていうか、俺はゲームするから頑張れって感じで。
とはいえ、それで終わりじゃ悲しい。
俺は振り返ってカゲを見る。
相変わらずのぼさぼさの頭に、ぎらりと光る野生動物みたいな瞳。俺はその眼、嫌いじゃないよ。

「メリークリスマス、カゲ」

そろそろ日付も変わっただろう。
クリスマス、全く一緒にいられないわけではない。
今日お泊りできるだけ十分かなって思っていると、カゲは眉間に皺を寄せた。
あれ、なんか間違えたかな。え、今日ってクリスマスだよね?日付あってるよね?
俺がちょっと不安になると、突然パジャマの中に冷たい手は入ってきた。
ぞわっとして身を縮める。

「ひっ」
「プレゼントなんかよりお前をよこせよ」

腹を探る手に、俺は慌ててその手をつかむ。
そんなつもりはこっちにはちっともない。
なんで今日に限って、上下が分かれるタイプのパジャマにしちゃったんだろう。オールインワンにしておけばよかった。

「あ、う……こら!非売品だよ!」
「ケチケチすんな」
「っ、そこ、さわんないで!」

上にのぼろうとする手を抑えると今度は反対の手が下に伸びてきて、俺はてんやわんやだ。
嫌だと首を振っても、我慢が嫌いなカゲが止まるわけがない。

「あ?んなこと言われて止まる奴がいるかっての」

そう言って、俺の抵抗なんて簡単に抑えてこんでしまう。
こうなってしまえば俺はもう止めるすべはない。
そもそも素手で勝てるわけがない。俺は自他共に認める、立派な引きこもりだ。
俺は諦めてううっと呻きながら恨めし気にカゲを見上げる。

「お……お手柔らかに願います…………」
「できねー約束はしない主義だ」
「せめて善処しよ!?」

全く容赦する気のないカゲに喚く俺の声は、カゲの口にふさがれた。






「いいから黙ってくわれてろ」



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